会社員として働いていると、給与や賞与から、いくらか年金保険料が差引かれています。なかには自分自身が年を取った際、将来もらえる年金の最高額はいくらなのか? と疑問に感じたり、老後生活を送る際、なるべく年金を最高額に近い金額でもらいたいと考える方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき年金の最高額はいくらなのか、最高額の年金をもらうためにはどうしたらよいのかご説明いたします。

※本記事は、老齢基礎年金を国民年金、老齢厚生年金を厚生年金として解説しています。

目次
会社員の平均年金受給額は?
年金の最高額はいくら?
年金の最高額をもらう条件とは?
年金の受給額を増やす方法はある?
まとめ

会社員の平均年金受給額は?

年金の最高額について説明する前に、会社員が実際に支給された公的年金の平均年金月額は、いったいどの程度のものなのか解説します。

日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」の2階建て構造です。会社員は1階建て部分の基礎年金と、2階建て部分の厚生年金を年金として受給することになります。

厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含んだ厚生年金の平均年金月額は、全体で14万3,965円、男性で16万3,380円、女性で10万4,686円です。

年金の最高額はいくら?

会社員は国民年金と厚生年金の2種類を公的年金として、受給することをお伝えいたしました。では、国民年金と厚生年金の最高額は、いくらなのか解説したいと思います。

(1)国民年金(基礎年金)の最高額

国民年金の最高額は、日本年金機構によると、月額66,250円(68歳以上は月額66,050円)となっています。

(2)厚生年金の最高額

平成15年4月以降に加入した場合の厚生年金の受給額は、下記の算式により計算することが可能です。

厚生年金の平均標準報酬額 × 5.481 / 1,000 × 加入期間の月数

※平成15年4月以前は計算式が異なります。

「平均標準報酬額」は、各月の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額を被保険者期間の月数で割った金額です。「標準報酬月額」と「標準賞与額」は、受け取る給与と賞与の額が高いほど高くなり、将来受け取る厚生年金も高くなります。ただし、標準報酬月額と標準賞与額には上限があるため、受け取る年金額にも上限はあります。

標準報酬月額の上限額は65万円(32等級)、標準賞与額の上限額は150万円で、標準賞与額の対象になるのは年3回までです。これら上限額の平均標準報酬額は、102万5,000円になり、加入期間は会社員として働き始めた年齢から、退職するまでの期間を言いますが、加入上限年齢は70歳と定められています。

仮に15歳から会社員として働き始め、70歳で退職する55年間の平均標準報酬額が102万5,000円である場合が、受け取る年金の最高額とするならば、厚生年金の最高額は年間で370万7,897円となり、月に換算すると30万8,991円です。

※わかりやすくするため、被保険者として加入していたのは、すべて平成15年4月1日以降として厚生年金の受給額を計算しています。

年金の最高額をもらう条件とは?

年金の最高額をもらうためには、それぞれ下記の要件をクリアしなければいけません。

国民年金(基礎年金)

国民年金を満額でもらうためには、定められた加入期間である20歳から60歳の40年間、毎月欠かさずに年金を納付すことが条件になります。

厚生年金

前述のとおり年収、加入期間により厚生年金の受給額が異なりますが、以下の条件を満たすことで厚生年金の最高額を受けることができます。

1、加入期間中は標準報酬月額の上限(65万)である63万5,000円以上の給与を受け取る

2、加入期間中は賞与を常に年3回、標準賞与額の上限である150万円以上受け取る

3、年齢が低いうちから会社員となり、以後70歳まで継続して働く

年金の受給額を増やす方法はある?

会社員が将来年金を増やす方法として以下のものがあります。

1:繰下げ受給

国民年金と厚生年金を65歳で受け取らずに、66歳以後、75歳までの間に繰り下げて受け取りを開始した場合、繰り下げた期間によって増額した年金を受け取ることができます。また、その増額率は一生変わりません。

繰下げ受給をした場合の加算額は、基礎年金の額(振替加算額を除く)及び厚生年金の額に下記の増額率を乗じることにより計算します。

増額率 = 0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数

仮に75歳まで繰り下げた場合は、年金受給額は84%増加します。受給開始時期は遅くなりますが、繰り下げて受給することにより年金額を増やすことが可能です。

ただし、繰り下げ受給すれば、繰り下げた期間に応じて年金額が増額しますが、受給開始から亡くなるまでの期間が短いと、65歳から受けるよりも受給総額が少なくなる可能性もあります。繰り下げ受給を選択するかどうかは、ご自身の健康状態などを考慮して検討する必要があるでしょう。

2:任意加入

40年の納付済期間がないため、基礎年金を満額受給できない場合などの際(厚生年金は除きます)、60歳から65歳までの期間に、国民年金に自主的に加入して保険料を支払う制度を任意加入と言います。任意加入の制度を利用することで、年金受給額を満額に近づけられますので、将来の年金額を増やすことが可能です。

3:年金保険料の追納

基礎年金の年金額を計算するときに、保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認を受けた期間がある場合は、年金の受給資格期間として計算されますが、年金額には反映されません。そのため、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が低額になります。

そこで、保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認を受けた期間の保険料について、後から納付(追納)することにより、基礎年金の年金額を増やすことが可能です。また、税金においても追納によって支払った保険料は、社会保険料控除が適用されるため、所得税及び住民税が軽減されます。

4:私的年金の加入

私的年金に加入して将来の年金額を増やす方法もあります。なお私的年金にはiDeCo(個人型確定拠出年金)のように積み立てた掛金は、全額が所得控除の対象となり、運用益には税金がかからない商品もあり、所得税と住民税を軽減しながら、私的年金を構築することも可能です。

まとめ

会社員の場合、老後においては、国民年金と厚生年金を受け取ることができます。しかし、もし納付していない期間があったり、納付を免除した期間があれば、任意加入や追納の制度を利用することも可能です。また、私的年金に加入したり、場合によっては繰り下げ受給を検討し、将来受け取る年金を増やしていくことを考えてみてはいかがでしょうか?

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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