シスターフッド……女性同士の連帯が叫ばれる昨今、実際の友情をテーマにライター・沢木文がインタビューからわかったリアルを紹介する連載。今回のテーマは「熟年離婚と片づけられない女」だ。

20年間以上同居した夫婦が別れる、いわゆる「熟年離婚」が増えている。2022年度『離婚に関する統計』(厚生労働省)を見ると、「20年以上同居した夫婦」の離婚の割合が上っていることがわかる。2020年の最新データでは、21.5%と、過去最多を更新。

20年目の結婚記念日は「陶器(磁器)婚式」と言われる。長年の結婚生活で育まれた夫婦の固い絆からそう呼ぶという。一方で、20年目に「陶器」は割れるという考え方もある。

茜さん(59歳・会社員)は、熟年離婚した友人・恭子さん(59歳)が、息子(20歳)を放置し、恋愛にのめり込んでいる様子に、困惑している。

片付けられない私は、結婚ができない

茜さんは大手企業でシステムエンジニアの仕事をしている。59歳の実年齢とは思えないほど若々しく、歯や肌が美しく健康的だ。

「私が若く見えるのは、子供を産んでいないから……というか、結婚もしていないからですよ。私の世代は、結婚した女性は家事と育児を一手に引き受けなければならないと思い込まされていた。結婚していないから、会社も仕事を続けることを許してくれた。40代になるまでは、そんな私に負い目がありました」

しかし、43歳のとき、霧が晴れたように開き直れたのは、子供を産まない人生を受け入れられたからだという。

「だから、私、実家から出たことがないの。不便とはいえ都心にあるし出る理由がないのね。実は今も85歳の両親と暮らしていて、母が私の部屋を片付けてくれているのよ」

いたずらっぽく笑う茜さんは明るく魅力的だ。当然、多くの男性から求愛されたという。お互いの親にも会い、結婚直前まで行ったことも何度かあったが、いざ、結婚式場を決めるとなると、自分から辞退してしまったという。

「理由は、片づけられないから。子供のころから部屋も学校の引き出しもバッグもぐちゃぐちゃ。幼稚園の先生からも親からも呆れられて、“どうしてできないんだ”“ちゃんとしなさい”と怒られながら育ちました」

友人の恭子さんは、幼なじみの“片づけられない仲間”だという。2人は5歳ごろからお互いの家を行き来し、人形遊びをしたり、友人同士でゴム飛びや石けりをして遊んでいた。

「恭子は私よりも片づけられない。私は食べ物などの有機物は捨てるけれど、恭子はそれも放置する。最初はコバエが出るけれど、そのうち乾くでしょ。だからそれでいいんだって」

同じ悩みを抱えた少女は、小学校に進学するとお互いが唯一の味方になる。

「机が汚いことや忘れ物が多いと、当時の学校の先生は反省文を書かせたの。“私はダメな人間です”とか“今日は体育着と箸を忘れました”とか。あれはつらかったけど、恭子がいたから耐えられた」

ただ、茜さんは小学校3年生くらいから頭角を現すようになる。勉強ができるようになったのだ。

「なんかのテストですごいいい成績を出して、親も先生も手のひらを返したの。母は“あなたは結婚できないのだから、手に職をつけなさい”と、進学塾に通わせてくれて、第一希望の学校(名門女子中高一貫校)に合格。母は医者にしたかったみたいだけど、私は人が嫌い。とりあえず、OB(卒業生)が強そうな大学に行ったの」

そこは難関私立大学の理系の学部で、茜さんは先輩に可愛がられて、現在勤務する会社に就職を決めた。その間も、恭子さんとも交流は続いていた。

【21歳年上の男性と、20歳で結婚……次のページに続きます】

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