勉強と恋愛、どちらを選ぶのか
茜さんは勉強ができたので、私立女子校に進学したが、恭子さんは地元の中学校に進む。
「朝が起きれなかったみたいで、今でいう不登校になっちゃってた。やれば勉強はできるから、試験前に勉強を教えに行っていたんだよね。それから私立の女子高校に行ってからも、私が教えに行ってたんだけど、何回もすっぽかされた。あるとき怒って電話したら、彼氏とデートだったと。勉強と恋愛どっちをとるのか、と聞くと、彼氏だって。高校も行かなくなって、中退したみたい。ほら、私達は朝起きれないから」
茜さんが中高6年間、無遅刻だったのは母親が「高い授業料のもとを取れ!」と鬼の形相で起こしに来て、茜さんを家から叩き出したから。
「靴下も履き終わってないのに、“時間だ”と掃除機の柄で叩いてきたからね。あの時はクソババアと思ったが、今は感謝。恭子の両親は、彼女に無関心だったみたい。それからしばらく疎遠になって、連絡が来たのは彼女の結婚式だった」
池袋の結婚式場に行くと、派手なウェディングドレスを着た20歳の恭子さんと、太った中年の男性が高砂に座っていたという。
「恭子はスナックで働いていて、そこのお客さんと結婚したみたい。あのときは驚いた。恭子に負けた……というか、あの時代、“結婚は人生の必須項目”であり、それは女性にとって“手に職をつける”以上に優先すべきことだったんですよ。私は当時、大学生で同級生の彼氏と付き合いつつ、社会人のアッシー君(車を出してくれる男性)や貢君(プレゼントをくれる男性)が欲しいなと思うくらい幼稚だったから」
茜さんは父親から、「オマエは恭子ちゃんに女として負けたね」と言われ「その通り」だと思ったという。
「今思えば、恭子は自分が働けないから、養ってくれる人が欲しかったんだと思う。この人とは、グアムの新婚旅行で“やっぱり無理”と旅行途中で帰って来てしまい、1年もしないうちに離婚。でもバツイチになった恭子は前よりも自信があって、カッコよかった」
【貸した金は200万円以上だが、「それでもよかった」という真意とは……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。