2025年、団塊世代約800万人が後期高齢者となる日本。団塊ジュニア世代も定年を見据え、老後について考え始めた人も多いのではないでしょうか。とはいえ、現役世代の人口は急減し、退職金や年金は減額が予想され、お金の不安はつのるばかりです。
定年前後のマネープランについて詳しいマネーコンサルタントの頼藤太希さんは、定年後に充実した生活を送るのに必要なことは、必要な知識を手に入れることと準備を始めることだと言います。今回は定年前後のお金との付き合い方を6つのルールにまとめた頼藤太希さん監修の『定年後ずっと使えるお金のルール』(宝島社)から、老後に準備すべきお金の見積もり方と公的制度の活用方法ついてご紹介します。
お金の不安に振り回されず、余裕のある老後を過ごすために、必要な知識を手に入れ、今からできることを始めてみませんか?
監修/頼藤太希
定年後の収入と支出を把握。老後に準備すべきお金を見積もる
赤字を出さない家計管理を考えよう
一般的に、老後の生活費は現役時代の7割程度に減るといわれています。それは、教育費などの大きな出費が減り、住宅ローンも完済し、持ち家に住む人が多くなるからです。しかし、家計の支出は、それぞれの家庭によって異なります。今の年間の支出から、教育費と住宅ローンを引いた分が、老後の年間支出の目安と考えておくと、自分の世帯に必要なお金がわかると思います。
教育費や住宅ローンがなくなると、家計の支出は、(1)日常生活費(2)一時的な出費(3)医療費・介護費の大きく3つに分けられます。これらは、定年後も一生かかるお金といえます。
一方、定年後の収入は、年齢が上がるほど年金中心になります。それをカバーするのが、働いて得る収入やこれまで蓄えてきたお金ということになります。
定年後に見込まれる収入と支出をチェックし、赤字が出そうであれば、まずは支出を減らすことを考えましょう。とはいえ、節約ばかりではせっかくの老後が楽しくなくなってしまいます。
定年後のおもな収入と支出は?
ゆとりある老後のために必要なお金を準備する
上の生命保険文化センターの調査でもわかるように、最低限の生活費だけなら、夫婦の年金があればほぼまかなえます。ただし、それだとやりたいことや欲しいものを手に入れることは難しくなってしまいます。
ゆとりある生活をするためには、老後に必要なお金を割り出し、老後までに準備しておくことが肝心です。
日々の生活にかかるお金も人それぞれなら、老後に必要なお金も人によって違います。下の計算式に、老後の支出と収入を当てはめて、計算してみてください。支出から収入を引いて、不足額が出た場合は、赤字額に65歳時点の余命を掛け算し、医療・介護・一時出費の見積額を足してください。その答えがあなたに必要な老後資金です。
老後までに準備するお金を計算しよう
ただし、その老後資金も退職金や企業年金、貯蓄などでまかなえる場合は、今から焦って蓄える必要はありません。これらでまかなえない分のみ、65歳までに準備するようにしましょう。
公的制度をフル活用して最低限の負担のみ。老後の「医療費」「介護費」に不安なし!
民間保険に頼るより公的保険の恩恵を受けよう
老後のお金で最も不安を感じるのは医療や介護にかかるお金ではないでしょうか。「いくらかかるかわからない」からといって、高齢期に民間の医療保険や介護保険に加入するのはおすすめしません。日本では公的医療保険制度と介護保険制度があるため、実は医療費や介護費の自己負担額はそれほど多額にはならないのです。
将来、高額な入居金がかかる高級老人ホームや、保険適用外のがん治療などを受けたいという場合は別ですが、医療保険や介護保険が適用される治療やサービスを受ける場合は、高齢になるほど自己負担は少なくなります。
下記の医療費と介護費のデータから見ても、1人800万円ほどの備えがあれば65歳から90 歳までの25年間をカバーできそうです。
医療費と介護費はいくらかかる?
介護にかかる費用と期間は?
また、医療費や介護費は高額になるとお金が戻る制度があります。下におもな制度を紹介しましたのでチェックしてください。これらの制度を賢く活用し、自己負担額を減らしましょう。
医療費と介護費は公的制度で自己負担を減らす
医療や介護は自己負担が収入に応じて1~3割に抑えられているだけでなく、自己負担が高額になった場合の救済制度も充実しています!
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頼藤太希(よりふじ・たいき)
株式会社Money&You代表取締役。マネーコンサルタント。中央大学客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。月間400万PV超の女性向けWebメディア「Mocha(モカ)」や登録者数1万人超のYouTubeチャンネル「Money&YouTV」を運営。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計120万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。