2025年、団塊世代約800万人が後期高齢者となる日本。団塊ジュニア世代も定年を見据え、老後について考え始めた人も多いのではないでしょうか。とはいえ、現役世代の人口は急減し、退職金や年金は減額が予想され、お金の不安はつのるばかりです。

定年前後のマネープランについて詳しいマネーコンサルタントの頼藤太希さんは、定年後に充実した生活を送るのに必要なことは、必要な知識を手に入れることと準備を始めることだと言います。今回は定年前後のお金との付き合い方を6つのルールにまとめた頼藤太希さん監修の『定年後ずっと使えるお金のルール』(宝島社)から、受け取る前から確認しておきたい退職金についてご紹介します。

お金の不安に振り回されず、余裕のある老後を過ごすために、必要な知識を手に入れ、今からできることを始めてみませんか?

監修/頼藤太希

50代のうちに確認しないと大後悔! 自分の退職給付制度はココを調べよう

会社の制度が思った以上に複雑になっていることも

会社員ならば、老後資金として退職金をあてにしている人も多いでしょう。しかし、退職金は、どの会社でも必ずもらえるわけではありません。

厚生労働省の「就労条件総合調査」(2018年)によれば、退職給付制度がある会社は80.5%で、残りの約2割の会社には退職給付制度がありません。定年直前になって、あわてないためにも、50代半ばぐらいになったら自分の会社の制度を確認してください。

退職給付制度には、退職金を一括でもらう退職一時金と、受け取り方が選択できる企業年金の2つがあります。前出の調査では、退職給付制度がある会社のうち、73.3%が退職一時金制度のみを採用しています。ただし最近は、退職給付制度の見直しを行う企業も増えています。

会社によっては一時金制度に加えて、企業型DCなどをあとから導入するなど、複数の制度を併用している場合もあります。自分の会社の制度や受け取り見込額を調べ、退職金のもらい方や使い道の検討を始めましょう。

あなたの退職金はどれ?

「退職金」とひと言でいっても、会社によって種類はいろいろ。自分がどの制度に加入しているか知らないと、受け取り方で失敗する可能性大!

退職金・企業年金チェックポイント

自分の制度がわかったら、老後のマネープランを検討するため、次のようなことを確認しておきましょう。

退職金は受け取り方で手取り額が変わる「一時金」「年金」はどう選択する?

企業年金がある会社なら退職金の受け取り方が選べる

退職給付制度は、制度ごとに受け取り方のルールが決まっています。会社の制度が一時金のみという場合は、全額一括でしか受け取ることができません。

一方、企業年金制度がある会社は、その種類にかかわらず、ほとんどの場合「一時金」「年金(分割)」「一時金と年金(分割)の組み合わせ」の3つから受け取り方法が選べます。年金で受け取る場合は、受け取り年齢や回数などに要件が設定されているので、事前に確認しておくといいでしょう。

また、注意しておきたいのは、企業年金は、退職時に自分で手続きをしないともらえないということです。企業年金連合会の報告によれば、2022年3月末時点で企業年金を申請せずにもらい忘れている人が約112万人もいるそうです。たとえば、過去に転職経験がある人などは、以前勤めていた会社で加入していた自覚がなく、請求手続きを行っていないケースが意外に多いのです。心当たりがある人は、勤めていた会社や企業年金連合会に問い合わせてみましょう。

制度別 退職金のもらい方の選択肢とは?

退職金のもらい方は、会社の制度によって選択できる場合と選択できない場合があります。

受け取り方を間違えると支払う税金が増えることも

退職金の受け取り方を決めるうえで、知らないと損するのは、社会保険料と税金の負担です。これらは、全額一括で受け取る場合と、分割して年金で受け取る場合では扱いがまったく違うのです。

まず、退職金を全額一括でもらう場合は、退職所得控除が受けられます。これは勤続年数が長い人ほど控除が増えるしくみです。

たとえば、大卒でずっと同じ会社に勤め60歳で定年を迎える人なら、勤続年数は38年です。これを上の表の計算に当てはめると、退職金が2060万円以内であれば税金がかかりません。しかも、どんなにもらう金額が多くても、社会保険料が高くなることもないのです。

一方、年金受け取りにすると、受け取っている間、会社が1~2%程度の利息を付けてくれるので受け取り額面は増えます。しかし、公的年金等控除しか使えないため、控除が少なく課税される可能性が高くなります。課税となる場合は、雑所得として総合課税されるため、社会保険料の負担も増える可能性があります。

一時金と年金の大きな違いは社会保険料と税金

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頼藤太希(よりふじ・たいき)
株式会社Money&You代表取締役。マネーコンサルタント中央大学客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。月間400万PV超の女性向けWebメディア「Mocha(モカ)」や登録者数1万人超のYouTubeチャンネル「Money&YouTV」を運営。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計120万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。

 

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