シスターフッド(女性同士の連帯)を描いた映画やマンガがヒットし、女性同士の友情が注目されている。しかし、現実は、うまくは行かない。これは女性の友情の詳細をライター・沢木文が取材し、紹介する連載だ。
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「ルッキズム」という言葉をよく目にする。これは外見重視主義のことで、「外見がその人の価値を測る重要な要素」とする考え方を指す。確かに、容姿がいい人は恋愛のみならず、就職や仕事でも有利なように感じることもある。労働経済学の世界的な権威であるダニエル・S. ハマーメッシュもその著書『美貌格差: 生まれつき不平等の経済学』で、「見た目で生涯年収の差は2700万円」と書いている。
「美人は得だといいますが、長い目で見ると損ですよ」と話すのは、神奈川県に住む奈津さん(59歳)だ。幼なじみの美樹さんについて、複雑な思いを抱えている。
【これまでの経緯は前編で】
52歳で地元に戻って来た美貌の幼なじみの変わり果てた姿
美貌の美樹さんは、タレントやモデルをしたり、ホステスになったりして東京で生活していたが、52歳のときに地元に戻ってきた。80歳を超えた父親の介護の問題もあったという。
「美樹との再会は地元のスーパーでした。“なっちゃん、久しぶり”と声をかけてきた美樹は、相変わらずきれいだった。でも、近くで見ると、細かいシワが寄っていたし、清らかさのようなものが失われていました。声もガラガラで口臭もしました。車がないから家まで送ってほしいと言うので、助手席に座ってもらったら、たばこのにおいがすごかった」
家に寄って行けというので、中に入るととても散らかっている。茶渋だらけのお茶碗で出される薄いお茶。湿った座布団に座っていると、美樹さんから「なっちゃんはかわいいから、モデルになった方がいい。彼氏がここの社長をしている」とチラシを渡された。
「10万円で登録すると、タレントになって高収入を狙えるという怪しげな内容ですよ。息子に聞いたら“モデル詐欺”と言うんですって。でも、これすごいのが、同級生の中に引っかかった人が意外と多かったこと。美樹が何十年も前にタレントをしていたから信頼できると思うんでしょう」
味をしめた美樹さんはネットワークビジネスや投資関連の勉強会も主宰。講師は50代の男性で、ピカピカの外車で公民館に乗りつけた。そして参加者に「あなたもすぐに私のようになれる」と焚きつけた。
「私も誘われたけど、ばかばかしくて帰りました。会場には美樹のお尻を触っていた当時のおじさんや、小中学校の同級生もいました。ほとんどが男性です。彼らの中での美樹は“街一番の美少女”で時間がとまっているんでしょう。ずっと美樹のことをチヤホヤしていました」
それから数年が経過した。美樹さんが勧誘していたのは、明かに結果が出ないものだ。タレントに登録しても仕事は来ず、投資していたお金は増えるどころか戻ってこない。
「それなのに、誰も騒がない。だまされた自分を認めたくないのか、美樹のお色気作戦に丸め込まれたのか。そうこうするうちに、美樹は1年前にスナックを開いた。そこに男たちが集まるようになったんです」
【まさか夫が頻繁に行っているとは……次のページに続きます】