成熟した大人たちが注目する、2022年を象徴する商品やサービスを顕彰する第21回「サライ大賞」。
多岐にわたる商品やサービスの投票をありがとうございました。選考委員の方々とともに慎重に議論を重ねました。本年も大賞と各部門の選考結果を誌面と動画でも発表します。お楽しみください。
選考委員
精神科医 和田秀樹さん(62 歳)
作家 島田雅彦さん(61 歳)
画家、タレント 城戸真亜子さん(61 歳)
本誌編集長 三浦一夫、「サライ.jp」編集長 稲葉成昭
21回目となった本年は読者投票に加え、選考委員に医師の和田秀樹さん、作家の島田雅彦さん、画家でタレントの城戸真亜子さんの3名を迎え、「ヘルスケア部門」「ライフスタイル部門」「トラベル・レジャー部門」「カルチャー部門」「サービス部門」の5部門を表彰。部門賞に輝いた中からサライ大賞を決定し、さらに「人物賞」「特別賞」が贈られた。
ライフスタイル部門賞
音量をあげなくても聞こえやすく
『ミライスピーカー・ホーム』サウンドファン
一般的には音が聞こえづらいと音量をあげて解決するが、本品を使うと音がはっきりと遠くまで届く。空港など公共施設での放送に採用されていたが、家庭向け小型モデルの「ホーム」が発売されると販売台数は急伸した。
開発のきっかけは親の難聴
創業者の父親が難聴になり、少しでも聞こえやすくできないかと開発を始めたのが発端だ。蓄音機の音は高齢者でも聴き取りやすいと知り、ラッパの曲面に着目し、聞こえやすい音が実現した。
「多くの高齢者は音が聞こえづらいことで日常のちょっとしたことを諦(あきら)めることが多いと思います。そんな困っている人への愛情を感じる商品です」(城戸さん)
「自分自身、聞こえる範囲が狭まっていると感じる。音量を上げずに済むのがいい」(島田さん)
「認知症の危険因子のトップは難聴といわれる。聞こえをいかに改善するかは、これからの大きなテーマとなるでしょう」(和田さん)
ヘルスケア部門賞
睡眠の質の向上に着目。愛飲者続出の飲料
『Yakult(ヤクルト) 1000』ヤクルト本社
ヘルスケア部門はヤクルト史上最高密度の乳酸菌 シロタ株を含有した『Yakult(ヤクルト)1000』に決定。一時的な精神ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」機能が認められたヤクルト初の機能性表示食品だ。1mLあたりに10億個の乳酸菌を閉じ込めるのは容易ではなく開発に20年の月日を要した。さらに乳酸菌が増えると酸味が増すため、ヤクルト本来の味を保つことにも苦心したという。
「腸内細菌が、眠りの質を良くするとは思っていなかった。すごい発見だ。腸は第二の脳と言われているが、この商品が期せずしてそれを証明したと思う」(和田さん)
トラベル・レジャー部門賞
温泉旅館「界」が始めた70歳以上限定のサービス
『温泉めぐり 界の定期券』星野リゾート
トラベル・レジャー部門を受賞したのは星野リゾートが運営する温泉旅館「界(かい)」に宿泊できるサブスクリプション『温泉めぐり 界の定期券』。「界」は伝統工芸や芸能を楽しめる体験や、地元の名物食材を味わえることで人気の温泉旅館ブランドだ。平日限定で年間12泊することができ、ひとりで宿泊するAプラン30万円、ふたりまでのBプラン、3人までのCプランはともに60万円。70歳以上かつ100組限定にもかかわらず、発売から2か月後には売り切れた。
「体験などもアレンジしてくれるのが嬉(うれ)しいですね。70歳になったら友人とこのプランを使いたいという夢ができました」(城戸さん)
カルチャー部門賞
世界遺産がどのように維持されているのかを知るきっかけに
クラウドファンディング「世界遺産法隆寺─1400年の歴史遺産を未来へ─」法隆寺
カルチャー部門は法隆寺が実施したクラウドファンディング「世界遺産法隆寺─1400年の歴史遺産を未来へ─」に決定した。世界最古の木造建築群であり、国宝、重要文化財など3000点以上の仏教美術を所蔵する法隆寺。だが
国の補助があるのは国宝や重要文化財の修繕などに対してのみ。そのほかは拝観料で賄われているため、コロナ禍の参拝者減少により困窮したという。そこでクラウドファンディングを実施。瞬く間に目標金額の2000万円を突破し、最終的には1億5000万円を超える支援金が集まった。
「建築史にも残るであろう、あの法隆寺でさえ、維持に苦労している。日本人の多くが心の拠り所にしていると感じた」(島田さん)
サービス部門賞
タクシーを指定した場所へすぐに呼べる
「タクシーアプリ」
タクシーアプリ『GO』/モビリティテクノロジーズ
サービス部門賞に輝いたのは「タクシーアプリ」。指定した場所へ、すぐに、もしくは予約した時間にタクシーを呼ぶことができるアプリだ。事前に、目的地やそこまでの道のりを設定することができたり、アプリ内で決済できたりと、タクシーを使うための便利な機能が満載。コロナ禍で公共機関を使うよりもタクシーを選ぶ人が増えたこともあり、この2年ほどで急成長した。利用者が業界トップを誇り、9月に1000万ダウンロードを突破したタクシーアプリ『GO』に贈賞した。
「仕事で出向いた先で、便利だと実感。都心だけでなく全国主要都市で使えるのがいい」(和田さん)
特別賞
人々の暮らしを変えた鉄道に感謝を込めて
「鉄道開業150年」JRグループ
鉄道開業150年キャンペーン『STATION STAMP』/JRグループ
特別賞は「鉄道開業150年」が受賞した。日本で初めての鉄道が新橋から横浜まで走ったのは、明治5年(1872)のこと。それから150年、鉄道は人々の暮らしを支えてきた。鉄道開業150年を記念して今年度にJRグループが実施しているキャンペーン、なかでも注目が集まるデジタル版スタンプラリー『STATION STAMP』に代表して贈賞した。北海道から九州までJRの480駅でデジタル版スタンプが取得できる。旅に出る楽しみがまた増えた。
人物賞
NHKの連続テレビ小説で注目の実力派俳優
上白石萌音さん(俳優、歌手・24歳)
人物賞は、読者投票でも多くの支持を集めた俳優の上白石萌音(かみしらいし・もね)さんに決定。上白石さんは2021年11月から放送されたNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の初代ヒロインを演じた。結婚したばかりの夫が出征後に戦死。ひとりで育てあげた娘とは喧嘩別れし、渡米する。そんな時代に翻弄される、昭和を生きた日本人女性を演じ、幅広い年代の人々の共感を呼んだ。
俳優のみならず、声優、舞台俳優、歌手として活動の場を広げ、目覚ましい活躍ぶりだ。