多くの企業には、Z世代から新人類世代まで幅広い世代が在籍し、定年後も働けるようにシニア層を採用する企業も年々増加しています。成果を出す社員がいる一方で、何もせずに若手に仕事を任せ、ただ在籍をしているだけの社員に頭を悩ませている企業もあるかと思います。
そこで、株式会社識学(https://corp.shikigaku.jp/)が、「働かないおじさん・おばさんに関する調査」を行いました。働かない社員がなぜ、働かなくなってしまったのか、仕事をしないで何をしているのか、そもそも業務の成果を適切に評価し、給与に反映される仕組みがあるのか、などについて調査結果をご報告します。報道の一資料として、ぜひご活用ください。
働かないおじさん・おばさんの存在
初めに「あなたがお勤めの会社に、働かないおじさん・おばさんはいますか」と質問したところ、結果は「いる」49.2%、「いない」50.8%で、半数近くの方が「いる」と回答しました。
次に「いる」と答えた方に質問しました。「あなたがお勤めの会社にいる働かないおじさんは、仕事をしないで何をしていますか?」と聞いたところ、TOP3は「休憩が多い(タバコを吸っている・お菓子を食べているなど)」49.7%、「ボーっとしている」47.7%、「無駄話をしている」47.3%でした。回答結果からは、はたから見ると仕事をしているとは思えない様子が挙げられています。
また、「働かないおばさんがいる」と回答した方へも同様に尋ねたところ、TOP3は「無駄話をしている」64.1%、「休憩が多い(タバコを吸っている・お菓子を食べているなど)」39.4%、「ボーっとしている」35.2%でした。「働かないおじさん」と比較すると、順位は異なるもののTOP3は同じ項目が並んでいます。働かない社員の仕事中の行動は、性別問わず変わらないようです。
さらに、「今まで一番驚いた働かないおじさん・おばさんの言動をお答えください」と聞いたところ、次のような回答がありました。
・自分が仕事をしたくないからと、パワハラで仕事を押し付けて逃げる。(37歳 男性)
・たばこ休憩に出かけて、30分後にトイレ休憩と言って30分帰って来ず、帰って来たら今度はたばこ休憩… …仕事を頼む時間がない。(34歳 女性)
・無駄話ばかりして、手が動いてない。(30歳 女性)
・スマホゲームばかりしている。(37歳 男性)
・いつも何もしない人が真面目にパソコンに向かっていると思い、遠目から見てみたらYouTubeを見ていた。(37歳 男性)
・フルリモートワークになってからパフォーマンスが下がった。ミスばかりするし、連絡すら取れず音信不通の状態になることが日常的にある。電話もメールもチャットにも応答がなく、ウェブ会議に呼んでも参加しない。(34歳 女性)
仕事中にゲームやネットサーフィンをするなど、仕事をさぼっている方が多くいるようです。また、リモートワークの普及により自宅で業務をしている社員と連絡が取りにくく、本当に仕事をしているのかわからない…… といったエピソードもありました。
しかし、今は働かなくなってしまった社員も、入社当初から働かなかったわけではないはずです。なにが理由なのでしょうか。次の質問では、「働かないおじさん・おばさんが、仕事をしなくなってしまった原因は何だと思いますか?」と尋ねました。
1位は「仕事への意欲がないから」が最も多く45.0%でした。次いで「年功序列制度で成果を出さなくても給与が上がるから」41.0%、「仕事を任されないから」26.3%と続き、さらに「目標がないから」「成果を出しても評価につながらないから」「評価する人がいないから」「体力・気力が落ちているから」「周囲が遠慮して仕事を頼まないから」という回答が続きます。
「その他」の回答では「解雇制度がない職場のため」「上司が業務管理をしていないから」といった意見も見られました。働かない社員を生まないために、「給与査定基準」を設けるなど、社員のやる気や意欲を引き出す仕組みが必要かもしれません。
次の質問では「働かないおじさん・おばさんが社内にいることで、どのような悪影響があると思いますか?」と伺いました。
悪影響として最も多かったのは「周りの社員の士気が下がる」で59.7%と、6割近くの方が回答しています。これは次点の「働かない人の分の業務が回ってくる」49.0%よりも10ポイント以上高い数値です。 働かない社員がいることで、周囲への「業務負担増」よりも「働く気持ちを削がれる」ことの方が大きく影響しているのは、とても厄介なことです。
その他にも、「会社の経営圧迫(人件費)」35.3%、「無駄話に付き合わされる」26.7%、「周りの社員の役職や給料が上がらない」24.7%などの声が続きます。「特に悪影響はない」と回答した方は9.0%で、9割以上の方が悪影響を受けているようです。
約3割が、将来働かない社員になるかもしれないと回答
「あなたは自分も将来、働かない社員になるかもしれないと思いますか? また、どのような状況・条件だと自分も将来働かなくなるかもしれないと思いますか?」と聞いたところ、なんと30.3%の方が、「自分も将来働かない社員になるかもしれない」と回答しています。その状況・条件については、「成果が給与に反映されない」が59.3%と最も多い結果になりました。
この結果を裏返せばわかる通り、「働かない社員」の発生を防ぐ方法は、「成果を給与で評価すること」ではないでしょうか。働く動機が曖昧なことが問題を生んでいるといえます。
さらに、働かないおじさん・おばさんがいる企業で「人事評価制度」が定められているかについて尋ねたところ、80.7%の方が「はい」と回答しました。そのうち、「業務の成果と給与が連動しているか」聞いたところ、4割近くの方が「いいえ」と回答しています。さらに、「給与査定基準が社員に明確に提示されているか」を聞いたところ、「いいえ」との回答が4割程度だったことがわかりました。
「成果に対する評価」と「評価の結果としての給与」が結びつかなければ、社員は頑張るだけ損と感じ、働く意欲が削がれていくでしょう。年功序列で給与が上がる仕組みも、成果に対する意欲を低下させているようです。このように評価と給与の仕組みが働かないおじさん・おばさんを生み、この瞬間も密かに「働かない社員予備軍」を増殖させている可能性もあるのです。
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「働かない社員」は本人だけが悪いわけではありません。会社の仕組みが生んできたのです。成果が給与に反映されない評価制度のままでは、「働かない社員」の意欲を高めることはできないでしょう。明確な「結果評価」の制度を導入し、常に成果に報いる体制を整えることが、「働かない社員」をなくし会社の業績を上げる第一歩なのかもしれません。
■調査概要
調査機関:株式会社識学
調査対象:全国の従業員数300名以上の企業に勤める20歳~39歳の男女で、お勤めの会社に「働かないおじさん」がいると回答した方
有効回答数:300サンプル
調査期間:2022年4月27日(水)~28日(木)
方法:インターネット調査
※本調査における「おじさん・おばさん」について、調査上は年齢を限定せず回答者が思う「おじさん・おばさん」として回答しています。