取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
自分と同じくらい金持ちの友人
開業歯科医の妻で、専業主婦歴35年の利恵さん(62歳)は、10年来の女友達グループとの関係に悩みを抱えている。
グループのメンバーは、利恵さんの他に元銀座のママ・杏奈さん、美容関連会社の女性経営者・百合さんで、全員が同世代だという。
接点がないこの3人が仲良くなったのは、自然派の料理教室だった。
「当時、ナチュラルに素朴に暮らすライフスタイルが流行っていたんです。自分で味噌を作ったり、精製した食材を使わなかったり。私たちが通っていた先生は、ゆるい菜食主義者でステキな人だったんですよね」
当時、利恵さんの娘2人のうち、下の子が大学を卒業し社会人になり家を出たばかりだった。
「主人は自分のことは自分でするタイプ。夜も会食ばかりでしょ。娘がいなくなると、洗濯物も減るし、食事の用意もしなくていい。することがなくなって、生きがいがみえなくなってしまったんです。いわゆる“空の巣症候群”になっていたと思います」
それを癒したのは、杏奈さんと百合さんだった。2人は結婚しておらず、子供もいない。都心のマンションでいきいきと暮らしていた。
「料理教室で、年齢も近いし、生活環境も似ている。人間って不思議なもので、似ている同士が仲良くなるんですよね。教室が終わるとホテルのティールームで何時間もおしゃべりしたりね」
そのホテルのラウンジは、コーヒー1杯2000円だ。友情を育むときに「私に似ている」という要素が必要だが、その中でかなり大きいのが「自由に使える金額」ではないか。
「それはあります。彼女たちは私と同じくらいお金を持っていたし、それを使えたんです。料理教室のレッスン費だって、決して安くはないですしね。私、学生時代の友達やママ友もいたんですが、“お茶しよう”というと、ファミレスになることが多くて。安くてステキなんですけれど、いちいち席を立ってドリンクをとりに行くのが時間のムダのように感じて。それなら3倍の料金を払うから、持ってきてほしい」
【一番お金があったのは、開業歯科医の夫だと思う……次のページに続きます】