福井県で蟹、金沢で和食、京都でぼたん鍋

料理教室が終わっても、3人は定期的に会うようになる。

「当時、銀座ホステスをしていた杏奈さんが、SNSの使い方を教えてくれて、それによりみんなでつながるようになったんです。百合さんが“琵琶湖で釣りしました! 夜は近江牛です”なんておいしそうな写真を上げるでしょ。それに“私も行きたい”とコメントすると、杏奈さんが“みんなで行こうよ”とメッセンジャーで連絡が来る。その機動力と見せてくれる世界がホントにステキでね。杏奈さんはどこに行っても友達がいて、九州に魚を食べに行った時は、その市の市長がわざわざお酒を持って来てくれたりしたんですよ」

1回の美食ツアーに10万円以上。夫は快く送り出した。

「主人は当時、歯科衛生士の女性と関係があったので、私が出かけると自由にできるから、気持ちよく送り出してくれた。蟹を食べに福井に行ったり、ぼたん鍋を食べに京都に行ったり、金沢に1食5万円の和食を食べに行ったりね。ハワイや香港も行きましたね。そこでわかったのは、開業歯科医であるウチが一番お金を持っているということ。私服のブランドを見ても、私が一番いいものを着ていたと思う」

そういうことに気付くと、相手にも伝わってしまう。それについて「ちょっといい気」になっていたと当時を振り返る。

「たぶん、態度に出していたと思います。それに、彼女たちは夫も子供もいない。私は息子と娘を産み育て、学校(難関大学)を出し、社会人にした。加えて主人の仕事もサポートして、親戚づきあいもしている。彼女たちに優越感を抱いて接していたとは思います」

子供がいない二人に対して、意図的に子供の話をしたこともある。

「子供がいない人に、子供の話をしないというのはマナーだとわかっていますが、ウチの子供たちはとても優秀なので、ついその話をしたくなっちゃうんですよね。お兄ちゃんは英語ペラペラだし、娘はインターネットに明るいですから。みんな大人だから何も言わないですけれどね。でも、私が優越感を持っているときって、杏奈さんと百合さんが2人でどこかに行っていることが、SNSを通じてわかるんです。それを知ると、態度を改める。するとまたお誘いが来る……彼女たちのことが大好きだし、気軽に誘えるし、得難い友達だと思っています」

【経済的な立場が逆転。経済的理由で旅行に行けなくなった私に、ライブ配信で伝えてくる……後編に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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