関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者・洋一さん(仮名・66歳)は貧困層の子供に勉強を教えるボランティアで知り合ったシングルマザーの舞子さん(38歳)に避けられ、やがて連絡が取れなくなったことで、私たちに相談をされました。
【これまでの経緯は前編で】
食事の時は楽しそうにしていたのに
舞子さんに避けられるには原因があるはずです。直近のやり取りを思い出していただきました。
「勤めていた時に使っていた串揚げ屋に行きました。大将も知っているから、いいものを出してくれて、会話も盛り上がりました。舞子さんも私の話をすごくよく聞いてくれた。それで、息子さんの話になり、私は“彼は勉強ができる。大学に行くなら学費を出してもいい”と言ったんですよね。すると“うれしいです”と喜んでくれました」
そして、洋一さんは舞子さんから手を握られる。
「お互いに酔っていたこともありますが、向こうから手を握ってこられて、帰りの電車の中でも腕を組んでいた。私からそういうことは絶対にしません。女性に対して欲望をぶつけるのは、知性がない人がすることですから」
聞く限りでは、洋一さんと舞子さんの関係は悪くはない。それなのに、LINEは無視され、息子さんは教室にも来なくなってしまった。舞子さんには借金があり、現在8歳の息子さんも舞子さん同様、親にお金がないから、進学をあきらめざるを得なくなってしまう。
「援助を申し出たのが早急だったのか、どこでボタンを掛け違ったのか。その理由が知りたいのです」
そこで、翌日から調査に入りました。舞子さん親子は昭和な雰囲気のアパートに住んでおり、そこから張り込みを開始。
舞子さんは早朝にビル掃除の仕事をして、一度家に戻り、息子を学校に送りだす。そして、9時から15時まで弁当店で働き、一度家に帰ってから、スナックで働くというトリプルワークをしていました。
平日1日と土日の調査をしたのですが、変わったところはありませんでした。
そのことを洋一さんに報告すると、「本当に良かった。舞子さんは幸せに穏やかに暮らしている。変な男がついていたらどうしようと思いましたが、安心しました」と帰って行かれました。
そして、その夜、洋一さんから私たちに連絡があったのです。
【証拠を持って会いに行ったが……次ページに続きます】