関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者、不動産関連会社勤務の信忠さん(仮名・62歳)は結婚35年、家庭内別居25年の妻の素行調査を依頼。妻は高校3年生のときに出会った高嶺の花で、今も妻を愛しているとのこと。
【それまでの経緯は前編で】
自宅を出て羽田空港に向かった
依頼者・信忠さんと妻は、没交渉。やみくもに尾行をしても費用ばかりがかさむので、行動パターンや、カレンダーなどを見て、予定を把握してもらいました。
すると、リビングのカレンダーに、家族が予定を書き込んでいることを発見。そこには、信忠さん以外の家族の誕生日、妻側の両親の結婚記念日まで記されており、ショックを受けたそうです。
気を取り直してみると、ペンで棒が引いてある箇所があり、そこには暗号のように「OKN&K13」と書いてある。きっとこれにはヒントがあると、この日に朝から張り込み開始。
このときまでは、私たちは浮気よりも、離婚の準備をしていると思ったのです。通常ならば、依頼の時に直近の写真を見せていただくのですが、信忠さんは家庭内別居25年なので写真が一切ない。
写真を見ると「浮気をする人」というのはだいたいすぐにわかります。これは探偵のカンでしかないのですが、おでこが輝いて、全身が開いている感じがしたら、だいたい浮気をしている。
信忠さんの自宅前で早朝から張っていると、10時に髪を内巻にして白いコートを着たスタイルがいい女性が出てきました。40代に見えるほど若々しく、マスクをしていても美貌がわかります。しかもおでこが輝いていて光っている。これは恋をしている女性がまとうオーラです。
ロングブーツのヒールの音も高らかに、最寄り駅まで歩いていきます。そして1時間ほどかけて、羽田空港に移動。タッチパネルでチェックインする便名を見ると、13時台発の那覇空港行き。カレンダーのメモにあった「OKN」とは沖縄のことでした。「&K13」は、Kさんと13時ということでしょう。私たちも同じ便を手配しました。
定刻になってもKさんは現れず、妻は単独で飛行機に乗ります。そして、那覇空港で飛行機を降りると、コンビニでペットボトルのお茶を2本購入。大きな水槽の前で50代半ばくらいの男性と待ち合わせします。髪がふさふさと黒く、ジャケットをスタイリッシュに着こなしています。浅黒く日焼けした肌と、金持ちならではのオーラがカッコいい。
男性は「会いたかったよ! さみしかった」などと大きな声で話しながらモノレールの駅へ。さりげなく妻をエスコートしており、見るからに人が良さそう。一緒にいる人を気持ちよくさせる力を持った人です。
このとき、妻はマスク越しでも分かるほど笑顔になり、声を出して笑っている。モノレールの駅を降りるときに、妻を先に降ろすだけでなく、私たちに対しても「お先にどうぞ」と言ってくれる。こういう不意打ちのように、ぽろっと優しさを与える男性は、モテるし出世することが多いんです。
【外資系超高級ホテルで夫婦のように過ごしている。次ページに続きます】