関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の依頼者・志乃さん(仮名・67歳)は、孫の誕生から、結婚40年になる夫(67歳)の浮気を疑う。その理由は、育児にノータッチだった夫が、手慣れた様子で生後2週間足らずの孫娘を扱っていることに気付いたから。

【これまでの経緯は前編で】

夫は保育園に入って行った

志乃さんと夫は、都内郊外の上品な住宅街の一戸建てに在住。私たちは、夫の尾行をするために、玄関前で17時から待機しました。

夫が出てきたのは、17時30分。低山登山で鍛えており、ときどきバンド活動もしているだけあり、おしゃれでスタイルがいい。少女らしさが残る志乃さんとお似合いの夫婦であることがわかります。

夫は1.5キロメートルほどの距離をすたすたと歩いて、駅の反対側にある保育園に入っていきます。暗証番号の鍵も「手が覚えている」という様子で開錠。2歳くらいの男の子と出てきて、コンビニに行きます。

お菓子と雑誌、カット野菜を買って、ありふれたマンションに入っていきました。2時間程度を過ごして、ひとりで自宅に帰って行ったのです。

ひとまず、この様子を撮影し、依頼者・志乃さんに報告。すると「なにこれ!」と驚いていました。

「やっぱり隠し子がいたのね。この子が大きくなるのは80代じゃない。一体どういうことなのかしら」

その後は、お金の心配です。自分の老後資金、子供や孫たちにお金を残したいこと。そして、「この子はかわいいけれど、びた一文わたさない」などと言っていました。

この仕事をしていると、さまざまな夫婦の内情を知ります。純情な愛情を持てるのは2年くらいまで。やがてリアルな生活が始まり、それが軌道に乗れば、15年くらいは一緒にいられる。

そのあたりに浮気やお金の問題が起こり離婚することもあり、ここを乗り越えると長い。私も15年以上探偵を続けていますが、調査依頼を受けるのは、ほとんどが結婚15年未満の夫婦です。余談ですが多いのは、熟年離婚を計画している人。弁護士が入り、財産分与や慰謝料の金額を少しでも上げるために私たちに依頼をするのです。

そこを経過した、結婚40年という志乃さんのようなご夫婦は滅多に依頼しない。

【結婚40年で離婚はするのか?……次のページに続きます】

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