とにかくカッとなり声を荒立ててしまう、イライラした後に落込む、急に顔が熱くなったり、汗が止まらなかったり、どうしてこんなに頭が痛いの? など、30~40代の「プレ更年期」や、40~50代の「更年期」の女性には、自分ではどうにもならない不調があらわれることがあります。

実は、その不調には漢方がよく効くことをご存知でしたか? 私の不調にも漢方が効くのか知りたい! どうすれば根本解消できるの? そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。

第71回のテーマは、「多汗」です。医師の木村眞樹子さんに教えてもらいました。

大量の汗に人目が気になる。夫の理解も得られずつらい

律子さん 52歳女性 主婦の方からご質問を頂きました。

「近頃、大量に汗をかいてしまうことに悩んでいます。気温に関係なく、首や顔、デコルテなどが汗びっしょりになってしまうのです。汗が流れ落ちて洋服に染みてしまうほどの量なので、とても困ります。

人と話していても、私の滝のような汗に皆さんびっくりしている様子。人の視線も気になって、目の前のことに集中できません。寝ている間も汗をかくので、夜中に目が覚めてしまうことにも悩んでいます。

汗だくの私を見て主人は『みっともなくて人前に出せない』と言い、知人に会うときも連れて行ってくれなくなりました。この大量の汗、どうしたら治まるのでしょうか?」

ご質問ありがとうございます。場所を問わず出てくる大量の汗、人の目も気になりつらいですよね。

律子さんのそのお悩みは、更年期の典型的な症状のひとつです。その症状の原因と対策について解説します。

多汗は更年期の女性ホルモンの乱れが原因

多汗は、更年期の女性ホルモンバランスの変調が原因です。更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下し、からだにいろいろな変化があらわれます。

そのひとつが自律神経の乱れです。自律神経とは、体の働きを調節したり、汗腺をコントロールしたり、血管の収縮に関わったりしているとても重要な神経です。「急に汗が大量に出てしまう」というのも自律神経がうまく働いていない証拠です。

自律神経は精神的な部分の影響を受けやすく、例えば生活におけるストレスも自律神経の乱れにつながります。50歳前後の女性には、子どもの自立、パートナーの定年退職、老後の不安など、様々な人生の変化が起こります。

体と心の両面のストレスで追い詰められ、さらに症状が悪化してしまう場合もあるのです。

そんな厄介な更年期の多汗を緩和するための、簡単な対処法をご紹介します。

更年期の多汗を抑える4つのポイント

更年期の不調の治療法のひとつに、ホルモン補充療法があります。これは、不足しているエストロゲンを薬で補い、ホルモンバランスの乱れを和らげていく方法です。

効果もありますが、同時に副作用などのリスクもありますので、通院して治療する必要があります。

ホルモン療法は怖いという方や、通院する時間がないという方には、以下のセルフケアや漢方の考え方によるアプローチがおすすめです。

1.蒸れにくいパジャマを選ぶ

寒い冬場は何枚も着込みがちになります。しかし、就寝時には吸放湿性が低く蒸れやすい格好は適していません。
綿やシルクなど、汗をかいたとしても乾きやすい材質のものを選ぶと、寝汗による冷えも防げます。「朝起きたら、ベタベタしたいやな汗をかいている」という人は、通気性を意識してパジャマを選びましょう。

2.汗が止まらないときは深呼吸をする

呼吸を安定させることは、精神をリラックスさせることにつながります。息をしっかり吐いて吸うことで、心が落ち着き、急激な汗をある程度抑えることもできます。

以下に、汗が止まらないときに役立つ呼吸法をご紹介します。

汗が止まらないときの呼吸法>
(1) まずは、吐くことから始めます。ゆっくりと風船から空気を抜くイメージで、おなかの膨らみをへこませていきます。
(2) 息を吐ききったら、次は肺を満たすイメージで息を吸います。このとき、鼻から吸うことを意識しましょう。
(3) これを数回繰り返します。だんだんと気分が落ち着き、汗やほてりも引いてきます。

とくに外出時、人前で汗が出てしまうと「どうしよう」と余計に焦ってしまい、それが自律神経にも影響を与えがちです。しかし、正しい対処法を知っておくことで、パニックにならず落ち着いて症状を抑えることができます。

3.適度な運動で自律神経の乱れを予防する

激しすぎない有酸素運動は、自律神経の乱れを改善し、いい汗をかくこともできるので一石二鳥です。

有酸素運動の代表として、ウォーキングやヨガなどが挙げられます。1日30分程度でもいいので習慣的に毎日続ければ、基礎体力を高まり、自律神経を安定させることができます。

ある程度運動に慣れてきたら、ジョギングや水泳、サイクリングなどもおすすめです。これらには、脂肪燃焼や生活習慣病を予防する効果も期待できます。いきなり激しい運動を行うのではなく、無理せず自分に合ったペースで行うのが長続きのコツです。

4.漢方薬で多汗の緩和を目指す


「更年期の汗の悩みを根本から改善したい」
「西洋薬に不安がある」 

そんな方におすすめしたいのが、更年期の様々な症状の治療に婦人科でも使われている漢方薬です。

漢方薬は自然の生薬を組み合わせて作られています。そして、化学合成された物質で作られる西洋薬よりも、一般的に副作用が少ないといわれています。

また、漢方薬が目指しているのは、苦痛を紛らわす対症療法ではなく、症状の根本的な改善です。心とからだの全体の改善に働きかけることができる漢方薬は、「つらい症状を改善したい」と真剣に悩む方の思いに応えてくれます。 

「普段の生活習慣から厳しくコントロールされるのは嫌」という方も、症状や体質に合った漢方薬をとり入れるだけなので気軽に続けられます。 

<多汗に悩む女性におすすめの漢方薬>

防已黄耆湯(ぼういおうぎとう):汗をかきやすく、むくみやすいなど、水分のバランスが乱れている方に用いられる漢方薬です。関節炎にも処方されます。

桂枝加黄耆湯 (けいしかおうぎとう):寝汗やあせもに悩み、汗の調節がうまくいかない方に使われます。上半身に汗をかくという場合にも適しています。

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう):ある程度体力のある方に処方されます。汗をかく、熱がこもる、ほてる、口の中が渇くという場合に向いています。

漢方薬を選ぶ際は、体質という面がかなり重要です。場合によっては効果が出ないどころか副作用も起こり得るので、しっかりと専門的な知識を積んだ医師や薬剤師に選んでもらうことが大事です。

「漢方薬には興味があるけれど、もう少し安くならないの?」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。スマホでも利用できる「あんしん漢方」のような新規サービスも登場しています。

AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、医師や薬剤師など漢方のプロが体質に合った漢方薬を見極めてくれるうえ、適切価格でお求めいただけいます。

不快な更年期の汗は漢方薬でしっかり改善

更年期症状のなかでも、目立ってつらい「多汗」。今回ご紹介したセルフケアや漢方薬は、つらい症状を抑えてくれるでしょう。なお、漢方薬を服用する場合は、ご自身にあった漢方薬を知るためにも専門家に相談することをおすすめします。

更年期は誰しも悩むものですが、症状を克服して元気に毎日を過ごしている方も多くいます。ひとりで悩まず、ポジティブ思考で対策をして乗り切っていきましょう。

<この記事を書いた人>

医師 木村 眞樹子
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならないからだをつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットをいかしつつ漢方の処方も行う。また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行なっている。
記事内に登場した「あんしん漢方」とは?
「お手頃価格で不調を改善したい」「副作用が心配」というお悩みをお持ちの方のために、医薬品の漢方を、スマホひとつでご自宅にお届けするサービスです。AI(人工知能)を活用し、漢方のプロが最適な漢方を選別。オンラインでいつでも「個別相談」可能。しかも「お手頃価格で」ご提供。相談は無料。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方)

 

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