簡単なようで、食感や味わい、形、調理法など、実は個性的な楽しみ方が提案されている日本のプリン。ここでは、老舗から注目の新店まで、全国各地で話題となっている名店の味を厳選して紹介する。

卵黄を産み落とす演出が反響

しょうゆきゃふぇ(横浜)

「元祖!NAMAプリン」935円。ドリンクセットは1342円。牛乳本来の甘みと砂糖による柔らかな甘みのミルクのムースの上に卵黄をのせ、カラメルをかけて食べる。余った卵白も他の料理に使っている。
コッコちゃんを押して卵黄を落とす仕掛けが好評。

『しょうゆきゃふぇ』で提供する独特のプリンを生み出したのは、フランス料理店オーナーシェフの六川光さん(52歳)。料理人として食材探しをしている時に出会ったのが、神奈川県内にある養鶏場の「恵壽卵」だった。

「この卵の、特に卵黄の良さをわかりやすく表現して、多くの人に味わってもらいたいと、作り始めたのがプリンでした」(六川さん)

しかし、普通のプリンではつまらない。そこで、プリンの構成要素を分解し、ひとつひとつの素材を際立たせることができないかと考えた。そうして、生まれたのが「元祖!NAMAプリン」だ。

提供方法を変えて成功

土台となるのは、なめらかなバニラ風味のミルクムース。牛乳の甘みを最大限に生かすため加熱をせず、少量の生クリームでコクを加えた。そこに卵黄と卵白を分ける器具「コッコちゃん」を使って生の卵黄を落とし、カラメルをかける。カラメルは卵黄の風味やミルクムースの甘みを引き締めるため、ほんのりとした甘さだ。

この3つの構成要素を合わせて口に入れると、卵黄のコク、カラメルの苦みと甘み、ミルクムースが一体となって独特のプリンの味わいが完成する。

「当初は卵黄をのせた状態で提供していたのですが、お客様の反応は期待ほどではなかった。そこで、合羽橋(東京)で見つけた『コッコちゃん』を使って卵黄を産み落とす方法にしたところ、大きな反響がありました」(六川さん)

新たな発想で大胆な食べ方を提案している同店のプリン。「素材の力をシンプルに引き出す」という料理人ならではの考え方から生まれた。

しょうゆきゃふぇ

プリンの他にも、醬油のモロミを使用した「しょうゆパンサンド」などが味わえる。

神奈川県横浜市中区元町1-30 藤田ビル2階 電話:045・225・8654 営業時間:11時〜17時 定休日:水曜 交通:みなとみらい線元町・中華街駅下車、徒歩約5分

取材・文/飯島千代子 撮影/山下亮一、高嶋克郎、鈴木暁

 

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