文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)
オーガスタ・ナショナルGCで行われたマスターズ。日本人唯一の出場者であり、初優勝した松山英樹選手に注目していたファンは多かったことだろう。このマスターズの時期になると、ゴルフ愛好家たちはボビー・ジョーンズを思い出す。今回はドイツにあるヨーロッパ最大のゴルフクラブ内にある「ボビー・ジョーンズ・チャンピオンズコース」をリポートする。
マスターズ・トーナメントの創設者、ボビー・ジョーンズ
“球聖”ボビー・ジョーンズ(本名ロバート・タイアー・ジョーンズ・ジュニア)といえば、マスターズ・トーナメントの創設者として知られるほか、そのマスターズ開催地であるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(ジョージア州)のコース設計にも携わった人物として広く世に知られている。
弁護士を生業としていた彼は、プロゴルファーになるのに申し分のない実力があったにもかかわらず、生涯アマチュアを貫いた。28歳という若さにしてアマチュアとして唯一、年間グランドスラム(「全米アマチュア選手権」「全英アマ」「全英オープン」「全米オープン」を1930年に制覇。これを含めたメジャー通算13勝を記録したことから、「プロより強いアマチュア」と呼ばれている。
また現在の競技ゴルフでの使用クラブ数は14本と決められているが、この本数になったのも、ボビー・ジョーンズの貢献があったことが有名だ。
当時クラブを31本持った全英アマ・全米アマ連続覇者のローソン・リトル選手に対し、イギリス人キャディーが「重すぎる」と協会にクレームを入れたことをきっかけに、クラブ本数の論争が勃発。1936年に開催された男子アマチュアゴルフ全米対抗戦「ウォーカー・カップ」の際、これらの議論に決着をつけようと、アメリカ代表のボビー・ジョーンズとイギリス代表のトニー・トーランスが車内会談をした。この結果を協会に申請し規定されたことで、現在まで14本が正式な本数と決められている。
ゴルフ界にそんな大きな影響を与えたジョーンズだが、46歳の時に脊髄空洞症を患い、車椅子生活を余儀なくされ現役引退。69歳の若さで他界してなお、彼は世界中で愛されているのだ。
長くて狭く、険しい、戦略性の高いコース「ボビー・ジョーンズ・チャンピオンズコース」
そんな彼の名をもつにふさわしい、品格溢れるボビー・ジョーンズ・チャンピオンズコースがあるのは「ワイマールランド・ゴルフクラブ・スパアンドリゾート」。ドイツはもとよりヨーロッパ最大級を誇り、非常に長い2つのゴルフコースから成り立つ。偉大な写真家の名をとった「ファイニンガー・ゴルフコース(Feininger Course)」と、ドイツ人詩人から名付けられた「ゲーテ・コース(Goethe Course)」の二つである。そしてプロのトーナメント・コースとして、各コースそれぞれの難しいホール(ファイニンガーコースの10-18ホールと、ゲーテコースの1-5、15-18ホール)を組み合わせ、「ボビー・ジョーンズ・チャンピオンズコース」と呼ばれている。
ヨーロッパでも特異稀なゴルフクラブだけが会員となれる称号「ワールド・オブ・リーディングゴルフ(Home – World of Leading Golf (https://www.world-of-leading-golf.com/))を獲得している他、現在新たに18ホールを建設中。将来的には更に世界中のゴルファーを魅了、トーナメントなどで大きく盛り上がることは間違いない。
ヨーロッパでゴルフ旅行に行くのなら、9月と10月を断然おすすめする。家族連れのゴルファーは夏が多いが、秋口であれば大人の雰囲気を思う存分楽しめ、ゴルフに集中することも可能であるためだ。
クラブハウス内はウエスタン調で居心地が良い。アメリカの良き時代を象徴するかのように、ステーキやハンバーガーなどをはじめ、バーボンなど飲み物も豊富に揃えてある。クラブショップ内ではボビー・ジョーンズゆかりの物や、彼のポートレートの入ったグッズを買う事ができ、ゴルフ好きへの逸品を見つけることができるだろう。
ホテル内だけでなく、敷地内全てにおいてコロナ対策も万全。どこへいっても気軽に声をかけてくれ、ホテルスタッフのホスピタリティも完璧であった。
この美しいコースをぜひ楽しんで、ボビー・ジョーンズに思いを馳せてみてはいかがだろうか。
文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター) ドイツ在住。外資系企業勤務を経て、2015年より近郊コミュニティーカレッジにてヨガや栄養学のクラス、料理教室を主宰。現在フリーランスライターとして、文化・生活情報を提供、寄稿。掲載メディア媒体は、『EJイングリッシュジャーナル』(アルク)、『家の光』(JAグループ)、不動産流通研究所、ぐるなび等。海外書き人クラブ所属(https://www.kaigaikakibito.com/)