取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「ちゃんと育ててもらったという思いはあります。でも、ふとしたところで何度も兄との差を感じてしまい、同居中は気に入られようと努力を続けていましたが今はもう諦めました。離れて暮らすようになってからは会いたいとも思わないようになりましたね」と語るのは、亜弥さん(仮名・37歳)。彼女は現在、都内で一人暮らしをしており、実家には12年帰っていないとのこと。
父親にヤキモチを焼くぐらい、母親が好きだった
亜弥さんは大阪府出身で、両親と3歳上に兄のいる4人家族。父親は親の代から続く不動産業を継いでおり、母親は家からほど近いマンションの管理人として勤めていたと言います。
「母親は、管理人として働いていた方が休みをとった日などに代わって働いていただけで、週の半分以上は家にいました。父親もそこまで遅く帰ってくることもなくて、晩ご飯は常に4人だった記憶が残っています。躾にも厳しくなくて、食事中はドラマやプロ野球中継などテレビが常についていて、食卓には会話も普通にありました」
両親の仲も良く、小さい頃は母親のことが大好きだった亜弥さんは、よく両親のベッドに潜り込み父親と母親を間を陣取っていたんだとか。
「母親のことが好きで、父親にヤキモチを焼いていたんですよ。平日はダメだったんですけど、週末はしょっちゅう両親のベッドに潜り込んでいました。母親を独り占めする父親が憎くて、取られたくなくて(苦笑)。
両親はずっと仲良しで、平日の夜中に目を覚ましたときにはよく2人で晩酌をしていましたね。父親はお酒が入ると声が大きくなるので、それが原因でよく目が覚めてしまっていたんですけどね(苦笑)」
お兄さんとの関係を聞くと、あまり仲良くはなかったと振り返ります。
「兄は小さい頃から冷静沈着というか、冷めているというか、私に対してむきになってケンカを仕掛けてくることもなく、私が何か文句を言ってもサラッと交わしてくるような人で、小さい頃はゲームをしている背中しか覚えていません。何度か一緒にゲームをしたことはあるんですが、格闘技系では私が一方的にボコボコにされるだけでストレスがたまるからちっとも楽しくなくて。
それに、兄は優秀で、運動や副教科など何でもそつなくこなすタイプ。両親は母親のほうが美形で兄は母親似、私は父親似で見た目でも勝てなくて……。劣等感から小学校高学年くらいからあまり口も聞かなくなりましたね」
【母のお気に入りは兄。目の前では褒めてくれるものの、差は明確だった。次ページに続きます】