母のお気に入りは兄。目の前では褒めてくれるものの、差は明確だった

成績の他にお兄さんと距離を置いた理由には、母親が関係していたと言います。

「兄は母親と行動するのが恥ずかしいという男の子の思春期が早くて、私が覚えているときにはもう母親とは一定の距離を置いた付き合いをしていました。でも、母親は煙たがられていても常に兄を構っていましたね。私のことを褒めてはくれるんですが、兄のことはどこでも褒めて、話題に出したりしていました。例えばご近所さんの前とか、祖父母の前とかでも。

叱られるときなどに『あんたよりお兄ちゃんのほうが優秀』などと実際に比べられたことはないんですが、なんとなく兄の側にいると私の悪いところが目立ち、兄の引き立て役になってしまう気がして一緒にいるのが嫌でした」

そんな優秀なお兄さんとの差は、家に飾られているものなどには顕著に表れていたそう。

「家には兄が何かでもらった賞のメダルやトロフィーが飾られていたんです。その中にはどこかで入賞した絵があり、その絵は高そうな額縁に入れて飾られていました。一方の私が水泳教室で1位になってメダルをもらったことがあったんですが、それは箱に入ったまま。母親は1位になったときには褒めてくれましたけど。それに私も中学のときに絵で賞をもらい、いろんな展覧会で飾られた後しばらくして家に戻ってきた絵を改めて母親に渡したんですが、飾ってはくれませんでした」

父親も亜弥さんのことをかわいがってくれたそうですが、思春期に入ったことで会話するのにも気を遣うようになっていき、母親とも反抗期からあまり会話をしなくなっていきます。

「まぁ普通の思春期に、反抗期で父親とは何を話せばいいのかわからなくなり、母親の些細な行動にも腹が立つようになっていって。心の中では、私じゃなくてお兄ちゃんのほうが好きなくせにってずっと思っていたんですけど、それは一度も口に出せませんでした。そのことを実際に母親から認められるのが怖かったからかもしれません」

体が女性に変わっていくことへの相談を母親にできない。生理用品を自分で買うことが恥ずかしかった。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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