取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「結婚して、子どもを授かって、新しい家族ができた時にやっと両親との関係を過去のものにすることができました。帰れる家があるということはこんなに安心できるものなのだなって、大人になってから体感しています」と語るのは、麻子さん(仮名・39歳)。麻子さんはドラックストアでパートの仕事をしながら、旦那さまと小学生の娘さんとの3人で暮らしている兼業主婦の女性です。
厳しい母に、無関心で何も発言しない父。我が家ではそれが普通だった
麻子さんは大阪府出身で、両親との3人家族。父親はファッション関係の企業に勤めるサラリーマン、母親は近所のスーパーやクリーニング店などでパート勤務をしていました。母親は時短勤務だったこともあり、麻子さんが帰宅時にはいつも家に居たと言います。
「母親は結構厳しかったです。買い食いなども許してくれなくて、家で用意されたお菓子しか食べてはいけませんでした。それに毎回遊びに行く時も誰と遊ぶのか、その子の家の電話番号を伝えないといけなかった。当時はたしか夏場は17時、冬場は16時と暗くなる前に帰らなければいけなくて、少しでも遅れると相手の家に電話されることになっていました。実際に何度か電話をされたことがあって、その後母親に怒られるよりも、翌日に学校で私のお母さんは厳しいとか怖いとか言われるほうが嫌だったことを覚えています」
小さい頃から両親が仲良く話すところはあまり記憶にないそう。父親の印象はお酒だと当時を振り返ります。
「父親は早くに帰ってきても一緒にご飯を食べることはなくて、別に用意されているおつまみをちびちびと食べながらお酒をずっと飲んでいました。父親が早く帰って来た時はテレビのリモコンは父親のもので、好きな番組を観られなかった。私は食事後は早々に自分の部屋に戻っていたので、その後父親が何をしていたかなんてよく知りません。両親の会話なども聞こえてこなかったし。
私の両親は目立ったケンカはしないけど、仲良さそうにも見えませんでした。母親が淡々と父親の世話をして、その用意されたものを何も言わずに父親が従っているといった感じでしょうか。私の家の近所には母方の親族が住んでいて、大型連休などは親族で一緒に旅行に行っていたので、3人での家族旅行とかの記憶もありません。でも、それが私の家での当たり前だったから特に変だとも思っていませんでした」
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