取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、都内の飲食店で正社員として働いている朱音さん(仮名・39歳)。神奈川県出身で、両親と3歳上に姉のいる4人家族。両親の離婚を阻止したい気持ちがあり、母親の愚痴の聞き役を自ら買って出ていたと言いますが、そこには小さい頃に母親を裏切ってしまった罪悪感も見て取れます。
「もう高校生といってもやっぱり両親に離婚なんてしてもらいたくない思いがありました。姉は仕事を始めて忙しそうな時期だったし、自分が母のストレスを消化してあげれば離婚を阻止できるんじゃないかなって。でも、思い返してみると、一生懸命に教えてくれていたピアノを突っぱねてしまったことがどこかで残っていたのかもしれませんね」
結婚生活は4年で終了。結果、反対した母親が正しかったことに
姉夫婦との同居で家族は賑やかになり、朱音さんは仕事に打ち込むことができたそう。そして、27歳の時に付き合って2年になる男性との結婚話が浮上しますが、母親はある理由から反対してきます。
「彼がバツイチだったんです。でも離婚理由も奥さんのほうの浮気で、すべて彼に非があるものじゃなかった。父親は反対せずに純粋に私の結婚を喜んでくれましたが、母親は彼の離婚歴、それに私と同じ職場というところにも引っかかっているようでした。その時にまだ私の仕事を認めてくれていないんだと、母親のことが嫌いになりそうでした。
それでも結婚の挨拶は、表面上はうまくいきました。母親は外面が良くて、家族以外の人には決して面と向かって文句は言わずに後で私たちにグチグチと言うタイプなので、挨拶はスムーズに進みました。彼が帰った後には、私の前で今から結婚するっていう人のことをよくもまぁこんなに酷く言えるなって感じでした。でも、私も母親に言い返すことはできずに、聞き流すだけしかできなかったんですけどね」
半ば反対を押し切っての結婚生活でしたが、4年で終了してしまいます。原因は相手の束縛にモラハラでした。逃げるように実家に戻った朱音さんを両親は優しく迎えてくれたと言います。
「結婚してからも仕事を続けていた私に対して夫は、『会社の評価も良くないんだから辞めたら』と専業主婦になるように仕向けてこられたり、日々のスケジュールを事細かに報告しなくてはいけなかったり、結婚生活は想像とはまったく違ったものでした。後から知ったんですが、夫は結婚前から別店舗で働く私のシフトを勝手にチェックしていたみたいです。そんな生活への我慢も4年が限界でした。相手もバツ2になるのが嫌なのか、なかなか離婚を受け入れてもらえなくて、最後はお互いの両親を含めた話し合いに発展して、離婚に至った感じです。そんな迷惑をかけてしまった私に対して、両親は必死に私の味方になってくれました」
【次ページに続きます】