日本の文具は日々改良され、世界的にも高品質で高機能を誇る。あまたの文具の中から、使いよく、日々の暮らしに役立つ文具を紹介。優れた文具は、人生を豊かに彩ってくれる。
描く
落ち着いた「日本の伝統色」を四季別に分類した水彩筆のセット
あかしや水彩毛筆・彩
あかしや 1000円(夏5本セット)
筆の本場、奈良の毛筆メーカーが仕上げた穂先が自慢の『彩(さい)』。落ち着いた色合いの「日本の伝統色」を四季別に分類して、各5色セットで発売。「春」「夏」「秋」「冬」「艶(つや)」「趣(おもむき)」の6種が用意されている。30色すべてが揃ったセットもある(6000円)。各色使い切りタイプで、分売(1本200円)もある。キャップを含む長さ170mm。
多くの家庭で使われている筆ペンだが、中には、水彩絵の具の筆の代わりになるものもある。
「筆ペンはメーカーにより、力のいれどころが違う」と話すのは、文具評論家の高畑正幸さんだ。たとえば、万年筆の老舗として知られるパイロットはすぐに乾くインクを開発して製品化した。ここで紹介するあかしやは、毛筆のメーカーゆえ、穂先の感触と書き味がよいことを誇る。そんなメーカーの特質を知ると、筆ペン選びも奥が深くなる。
あかしやの『彩(さい)』は、絵手紙やスケッチに最適な水彩筆ペンだ。水性染料インクと絵筆を合体させたペンで、そのまま描けば濃い色に、筆の穂先に水を含ませて描くと濃淡が出るなど、水彩絵の具のような表現ができる。常磐(ときわ)色、萌黄(もえぎ)色など、30種類もの「日本の伝統色」が揃い、水彩画だけでなく手紙の署名などに好みの色を使うのも面白い。
書く
乾燥を防ぐ完全気密構造のキャップを採用
プロシオン
プラチナ万年筆 5000円
同社が持つ五角絞りの金ペンの技術を、ステンレスペンに継承。ペン先に粘りをもたせ、スムーズな書き心地を実現。ペン先の乾燥を防ぐ完全気密機構により、キャップを外すとすぐに書き出せる。ペン先は細字と中字を用意。ブルーブラックインク1本付属。長さ139.7mm。5000円。問い合わせ:0120・875・760
ペン先のわずかな振動を抑えてストレスを軽減
ブレン
ゼブラ 165円(1色) 440円(3色)
油性ボールペンで書くとペン先が震えるというのは、書き手のせいではない。従来のペンは内部で起きた振動がペン先に伝わり、細かにブレを生じさせていた。そのブレを抑えるため、中芯を固定し重心を下げ、内部パーツの隙間をなくした。ノック式ボールペンながら、中芯と軸を一体化したわけである。インク色は黒、赤、青。ボール径は0.5mmと0.7mm。軸色は全3色(1色タイプ)。長さ143.6mm。問い合わせ:0120・555335
自分好みのボールペンを探す
万年筆も進化をしている。高畑さんによれば「比較的安価なペン先がステンレス製のペンでも、ペン先が金製の金ペンと同じくらいの書き味を持つ製品が出てきた」 という。
プラチナ万年筆の『プロシオン』は、日常使いの万年筆として新しく開発された。ペン先の乾燥を防ぐ機構をキャップに持たせることで、2年間使っていなくてもキャップを取ればすぐに書きだすことができるという。ペン先の形状を五角絞りにすることで、しなりが加わり金ペンに近い書き味になった。メモを取るときも、万年筆を使いたいという人はお試しいただきたい。
油性ボールペンは、日本の各メーカーがもっとも力を入れる分野だ。そのなかでヒットを続けるのが、2018年に発売されたゼブラの『ブレン』だ。油性ボールペンで字を書くときにペン先のブレが気になる人は多い。そこに目をつけ、中芯(なかしん)を支える機構を搭載することで、ペン先のブレを制御してなめらかに書けるようにした。
「油性ボールペンは各社、各モデルで書き味が少しずつ違うので、自分の好みのペンを見つける楽しみがあります」と高畑さん。
パイロットの『瞬筆(しゅんぴつ)』は、前述したようにすぐに乾くインクを採用した筆ペンだ。瞬時に乾くので、祝儀袋を手で汚すこともなくなる。年賀状の宛名書きも、書き終えたハガキを重ねて置いても、墨がほかのハガキに移ることがない。
1秒で乾く、カートリッジ式のインクが斬新な筆ペン
瞬筆
パイロット 700円
新開発の「速乾インキ」を使い、筆跡が1秒で乾く。筆ペンは墨が乾きにくいという印象が強いが、その不安は無用だ。書いたものをすぐに重ねられ、手紙やハガキを書く際にも手で汚す心配はない。穂先はコシがありまとまりやすい。長さ184mm。細字(写真)と中字を用意。インクはカートリッジ式(別売250円)。インクはカートリッジ式(別売250円)
※この記事は『サライ』本誌2020年9月号より転載しました。