1999年までポルトガルに統治されていた中華人民共和国 マカオ特別行政区、マカオ。カジノで知られた30平方キロメートル足らずの小さな地域「コタイ地区」が、今、ショッピングや驚きの仕掛けが施されたショーなどを楽しめる巨大リゾート地として生まれ変わっています。歴史地区の整備も進み、観光がしやすくなったマカオの新たな魅力を紹介していきます。
上へ上へと伸び続けるマカオ
みなさんは「マカオ」と聞いて何を思い浮かべますか? 私は1999年の返還より少し前にも訪れたことがあるのですが、その頃のマカオは古びたゴシック調の建物の角から、サングラスのギャングがこっちを見ていそうな独特の雰囲気がありました。
日が暮れると、カジノのネオンがギラギラと光り始め、夜の蝶なる美女が街角に立つ怪しげな魅力があったのです。まだ若かったので、カジノに入る勇気もお金もなく、エッグタルトをかじりながら街歩きだけを楽しんで、香港に戻る夜のフェリーに乗り込んだのでした。
それから10数年の月日が経ち、マカオ政府観光局の取材ツアーのお誘いをいただいた私は、今度こそ、カジノで大もうけして帰国したいと期待に胸を膨らませながら、送られてきたパンフレットを広げてみました。すると、一行目に「マカオの魅力はカジノだけではありません」と書かれているではありませんか。色とりどりの料理や遺跡などの写真とともに、「今では、多彩な料理にリゾートホテル、世界遺産など見どころがいっぱいです」と紹介されているのです。
マカオよ、そんなに見どころあったっけ? と首を傾げながらも羽田から一路、キャセイパシフィック航空で香港へ。ここからジェットフェリーに乗り、波しぶきを上げて船が突進しているうちに懐かしのマカオへ上陸です。
懐かしの…といっても、久しぶりに見るマカオは、以前とはまるで違っていました。街は整備され、高級レストランに大型ホテル、そして摩天楼のようにそびえる高層ビル群。新しくできたビジネス街でしょうか? 思わずガイドさんに尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。
「いいえ、これらの高層ビルは公団です。ここは40階建てくらいですね。マカオは土地がないので、タワーマンションに住んでいる市民も多いのです。おそらく世界一の過密度ではないでしょうか」
公団がタワーマンションとは! ガイドさんによると、1キロ平方メートルに約2万人、多いところではなんと約5万人が住んでいるそうです。人口が増えても土地がないから、住居は上へ上へとぐんぐん伸びていったのだとか。
いつのまにか島がひとつに
もっと土地が欲しい!と思ったマカオ政府は、なんとタイパ島とコロアン島の間を埋め立て、両島をくっつけてしまったのです! 確か昔のガイドブックの地図には中国大陸から続く半島と2つの島があったような気がしたのですが、現在の地図では島がひとつになっています。
何はともあれ、土地が増えたので、たくさんの住宅や公園を作ってめでたし、めでたし…になるはずが、コタイと名づけられた埋め立地に、せっせと建てたのは新しい巨大ホテルリゾート!?
「おや、住居はつくらなくていいのか? ますます人口が増えそうだ」と心配になりますが、まずは経済優先なのでしょう。「ヴェネチアン・マカオ」や「ギャラクシー・マカオ」「ホテル・オークラ・マカオ」など2000~3000室級の大型ホテルがここ数年で次々とオープンしたそうです。
そんな巨大リゾートホテル巡りが、ここマカオでは観光のひとつ。宿泊者でなくても、お金をかけずにリゾートホテルを楽しむコツをガイドさんに教えてもらいました。
「まず、ギャラクシー・マカオのエントランスのひとつであるダイヤモンドホールのショーはどうでしょう? 人気があって、しかも無料なんですよ」とガイドさん。
ダイヤモンドという名前からして金運が上がりそうですが、エントランスをくぐれば、ホールのど真ん中に巨大な噴水! 光も降り注いでいます! 天井には、縁起がいい鳥とされる孔雀の羽が七色に光っています。
そんな豪華絢爛なホールには、お出迎え係として背の高いグラマラスな美女が微笑んでいます。背中にも揺れる孔雀の羽がなんともセクシーです。
孔雀美女に見とれていると、突然、壮麗な音楽が鳴り響き、噴水の底からザザザーッと登場したのは、巨大なダイヤモンド!
音楽に合わせて、水が生き物ように跳ねたり、うねったりして、最後はナイアガラの滝のような水のカーテンがダイヤモンドを覆い尽くして終了。「次にお金持ちになるのは私かも!」と思わせるような金運アップショーでしたが、カジノに向かう人は気持ちが大きくなり過ぎないよう気をつけたほうがいいかもしれません。
すべてがピカピカのマカオ
次はホテル街を散策してみましょう。日本だとあまり例がないのですが、コタイ地区では同じ系列のホテルごとにカジノやショッピングセンター、プールなどの共有スペースでつながっていて、自由に行き来できるようになっています。
そのカジノには入り口に龍がいたり、ショッピングセンターの中にヴェネチアをイメージする運河が登場したりと飽きることがありません。コタイ地区は、まるで大人のディズニーランドのよう!
そんなコタイ地区を訪れたら、入場料はかかりますが見逃してはならないのが、シティ・オブ・ドリームズで絶賛上演中の「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」。制作費230億円、使用される水はオリンピック・プールの5個分なのだとか。
薄暗い会場にスモークがもくもくと立ち上ると、水の底からダイヤモンド…ではなく、今度は船のマストがニョキニョキと伸び、その細いマストの上でたくさんの役者さんが飛んだり跳ねたりと人間業とは思えないアクロバティックな動きを見せてくれます。
舞台装置はいったいどうなっているのか、プールかと思ったら底から急に陸が出てきたり、大量の水が一瞬で流れ込んできたり。このショーを観にマカオに飛んでも惜しくはないくらい素晴らしいエンターテインメントでした。
タイムスリップでもして未来都市を歩いているかのような錯覚に陥るコタイ地区。一日、歩いても回りきれないほどの見どころでいっぱいです。
次回は、高級リゾートのひとつ「フォーシーズンズ・ホテル・マカオ・コタイストリップ」の魅力に迫ります。
取材協力/マカオ観光局