1999年までポルトガルに統治されていた中華人民共和国 マカオ特別行政区、マカオ。島と島の間を埋め立てて出現したマカオのコタイ地区では今、リゾートホテルの建設ラッシュを迎えています。その中でも人気のある5つ星の高級ホテル「フォーシーズンズ・ホテル・マカオ・コタイストリップ」に宿泊してきました。広大なプールと美味しい創作中華のレストランが自慢のフォーシーズンズでの賢い過ごし方を紹介します。
広すぎる部屋にとまどう
埋め立て地のコタイ地区で大型ホテルの建設ラッシュが続いていることは、前回(魅惑のマカオ紀行 その1)触れました。現在、約3万室近くあるホテルが、あと3年でさらに2万室も増えるそうです。
そんな数ある大型ホテルの中でも、安定した人気を誇るのが「フォーシーズンズ・ホテル・マカオ・コタイストリップ」です。エントランスに足を踏み入れれば、丸天井にシャンデリア、ゆったりとしたソファにグランドピアノ。今から舞踏会でも始まりそうな美しいロビーですが、威厳があるのにアットホームな雰囲気が漂い、どこかヨーロッパの大地主さんの邸宅に呼ばれたような気分です。
チェックインを終えたら、さっそくお部屋へ。インテリアは明るく上品で落ち着きがあり、ノスタルジックな“ポルトガルマカオ風”。シングルルームといえども、キングサイズベッドが置かれたその広さは約50平方メートル。ひとりで泊まるのはもったいないくらいの広さです。窓際には大きなソファと広々としたデスクが備え付けられていました。こんなに広い部屋に泊まり慣れていないので、優雅に過ごすのは至難の技。
まずはソファでゆったりしようと思い、本や筆記用具など必要なものをとりに玄関近くのクロークまで往復するなど、部屋の中をウロウロしているだけで歩数計の数字はどんどん上がっていきます。
続いてバスルームへ。シャワールームが独立していて、バスルームだけでも日本のワンルームマンションくらいの広さがありそうです。ひとりで宿泊するというのに大理石の洗面台が2つもあって、なんだか申し訳ない気分になりました。これなら、夫婦ふたりや友人と泊まった時は順番争いをせずにすみそうですね。
5つのプールでリゾート気分を満喫
ところで、海はきれいとはいいがたく、山も緑もほとんど残っていないマカオのどこがリゾートなのか、ピンときませんでした。しかし、ホテルの敷地内はまさにリゾートと呼ぶに相応しい景色です! 巨額の資金を投じて立派な人工リゾート地を作り上げてしまったフォーシーズンズに驚きです。
この広大な人工リゾートには、水深の違う5つのプールに、涼しい東屋や水着のままで立ち寄れるバーなどが点在しています。ヤシの木の下で、デッキチェアに寝転びながら、カクテルを楽しむ贅沢を味わってみました。なるほど、まるで南国のビーチ・リゾートで過ごしているかのような気分です。木陰も多く、暑い午後は歩きまわらずに、ここで本を読んで過ごすのが良さそうです。
ミシュラン2つ星「紫逸軒」のお味は?
リゾート気分を満喫したら、さっそく夕食へ。マカオには中華料理やポルトガル料理などのおいしい店が山ほどありますが、せっかく高級リゾートホテルに泊まっているのですから、ホテル自慢の高級中華料理店「紫逸軒(Zi Yat Heen)」(ジーヤッヒン)を予約しておきましょう。
このお店は、お祝いの席など地元のセレブたちに愛されるミシュラン2つ星の有名店。洗練された創作中華を味わえると評判です。次々とドレスアップしたマカオの人々が入っていく姿を見て、もう少し、おしゃれをしてくれば良かったと後悔しつつ、美しいエントランスを抜けて個室へ。
ジャスミン茶をいただきながら、「高級中華って何でしょうね?」「やっぱり北京ダックじゃないかしら?」「いや、ここは北京じゃないですよ」と、隣の人とヒソヒソ話をしているうちに前菜が運ばれてきました。
こんがり焼かれた皮を見て、「おおっ、やはり北京ダック!」と思ったら、子豚だそうです。ちょこんと上品に金箔も乗っています。口に入れるとパリパリの皮にジュワッとした柔らかい肉のハーモニーがたまりません! 金箔と一緒にいただくと、なんだかお金持ちになれそうな気もします。
前菜は、ほかに味のよく染み込んだチャーシュー、小皿に乗っているのはアカクラゲ。そして手前のホタテは、さっぱりとした洋梨を挟んでいます。
前菜から肉をたっぷり使った料理が出てきて幸せな気分になりますが、次に運ばれてきたスープの底をすくい上げてさらに笑みがこぼれます。これはアワビではありませんか! 聞けば、貝や干しエビから出汁をとったスープだとか。
続いて、カニの爪が飛び出した皿がテーブルに置かれます。カニ肉を詰めて揚げ、その上にエビのムースをかけた贅沢すぎるひと品。カニとエビの旨味が溶け合った優しい味が印象的です。
4皿目は、予想外の料理が登場しました。イカ? それともコーン? 首をひねっていると、「これはウナギです」とウエイトレスさん。じつはウナギが苦手な私ですが、はちみつで味付けし、キンモクセイで香り付けしたウナギのクリスピー揚げは、もはやウナギではありません。ウナギ好きな人には少々、不満でしょうが、臭みはまったくなく、私でもペロリといただくことができました。
ウナギの後は、胃に優しいスープ。菜っ葉が白いものに巻かれて白いスープに浸されています。
「これは何ですか? クレープですか?」
「違います。これはキヌガサダケの筒ですよ。筒の中に、ほうれん草の煮浸しを詰めています」
筒ですか。なるほど、ひっくり返してみても切れ目がありません。白いスープは魚の出汁。見た目よりもあっさりした味です。
さあ、いよいよ最後のデザートです。さすが2つ星レストラン、惜しげもなく、たくさんのスイーツを運んできてくれました。胡麻団子やナツメヤシが入った生姜のスープや、濃厚なマンゴープリン、そしてマカオ名物・エッグタルトやキンモクセイのゼリーなどが乗ったお皿が次々と運ばれてきます!
デザートはどんな時でも別腹ですね。甘いイメージのある中華スイーツですが、おいしくてペロリといただきました。
コース料理のお値段は2万円ほど。ちょっと高めな設定ですが、マカオならではの洗練された創作中華を堪能できるとしたら、決して高くはありません。お誕生日や結婚記念日など特別な日にいかがでしょうか。
次回は、古い街並みが残る南のコロアン地区、北のタイパ地区の魅力に迫ります。
取材協力/マカオ観光局