六波羅蜜寺の寺宝の数々を「令和館」で拝観し、このまま帰京するのかと思いきや「ぜひ寄ってみたい店がある」と三浦一夫編集長。そこは六波羅蜜寺から南に歩いて約20分、三十三間堂の近くにある「お好み焼き 吉野」という老舗店であった。通りから入った路地の奥の店前には、席が空くのを待つ人がいる。創業52年、客からおかあさんと呼ばれる吉野久子さんがひとりで切り盛りをしてきた。全国からファンが来店する名店である。

店主の吉野久子さん(82歳)。カウンターの大きな鉄板で、何種類ものお好み焼きや焼きそばを作る。

店内は26席ほど。鉄板のあるカウンターを中心にテーブル席があり、常連客がおかあさんの作るお好み焼きやホルモン焼きをつまみにビールを傾けている。京都に来ると必ずここに寄るという横浜から来たお客さんも、常連の人たちと親しく話している。おかあさんは一見さんにも優しい。メニューの説明もニコニコ顔でしてくれる。

老舗店と聞き少し緊張気味であったが、和やかな雰囲気に三浦編集長も一気にリラックス。ビールを片手に熱々の「豚玉」をいただく。具材が特製ソースにからみ香ばしい煙が立ち上る。焼きそば入りのボリュームのある一品。麺が入るのは広島風のようでもある。これはどこ風かと訊ねると「どこということはないです。まあうち風ですかね(笑)」とおかあさん。ひとりで食べ切れるかと心配していた編集長だが、いつの間にか平らげてしまった。

「豚玉」950円。上ミノ焼(1300円)、レバー焼(同)などのホルモン焼きも人気。

休憩なしの通し営業ですが、疲れませんかと編集長が聞くと「もう慣れましたわ(笑)。それに今は週に3日お休みをいただいていますのでね」とおかあさん。 「いやあ、おいしかった。老舗店と聞き入店前は少し緊張しましたが、おかあさんはきさくで優しく、近所の行きつけの店にいるような気分でした。多くの人に愛される店になったのも、おかあさんの人柄なのでしょう。跡取りはいないとおっしゃっていましたが、この味は誰かに引き継いでほしいですね。京都に行く楽しみがまたひとつ増えました」(三浦編集長)

お好み焼き 吉野
営業時間:11時~21時(ラストオーダー20時30分)
定休日:月曜~水曜
電話:075‐551‐2026
アクセス:JR京都駅より京都市バス100、206、208系統「博物館三十三間堂前」下車徒歩約5分

 

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