服装が変わったのは、恋をしてから
筆者が服装について感想を述べると、名和さんは「この服は、彼女が好きなものを組み合わせただけなんですよ」と苦笑いする。彼女とのなれそめを伺った。
「その前に、嘱託の仕事を辞めたことをお話します。嘱託職員として、息子が大学を卒業するまでの3年間勤務したのですが、最後の1年間が地獄だったんです。あれがなかったら、65歳の嘱託の定年まで勤めていて、彼女に会うこともなかったんだろうな……。
最後の1年間、元部下の女性にこき使われたんです。その女性は男女雇用機会均等法の第一世代で、結婚もせず仕事に邁進していたのに、女性だからと管理職になれなかった。しかし、この時流に乗って3段階を飛ばした昇進をしたんです。
すると、今までのうっ憤を晴らすかのように、パワハラがさく裂。彼女の部下として実務をしている人が、うつでバタバタと休職し退職していく。そこで私に白羽の矢が当たり、彼女の下に着くことになった」
元部下の女性は、細かい手順、休憩の時間まで名和さんに指示。その指示内容が間違っていると、名和さんにミスを擦り付ける。
「ちょっと前に、『このハゲー!』と秘書を罵倒する国会議員がニュースになりましたが、あんな感じです。それでさすがの私も、面倒を見切れなくなって嘱託をやめました。しばらく、そのことを妻には言えず、近所をブラブラしていたら、昼間から営業しているカラオケスナックの看板に気が付き、フラフラと吸い込まれてしまったのです」
名和さんは、若い頃はバンド活動をしており、歌には自信があった。
「久しぶりに歌ってみると、全然ダメなんですよ。その日は、3人くらいの客しかいなかったのですが、歌うと爽快な気持ちになり、一週間後にまた行ったら、何かのイベントの後だったらしく10人くらいの女性がいました。
その中の一人が、彼女です。私はかつての演歌のヒット曲『氷雨』を歌ったのですが、席に戻った後に、『すごくよかったわ。あなたホントに素敵な声をしている。キュンときちゃった』と言われて驚きました。
彼女につられて周囲の女性も私の歌声を称賛してくれて、人生初のモテ期が来たような感じでしたよ。この服は、彼女と一緒に買い物に行き購入したものです」
【モテ期の中で選んだのは、最初に存在価値を認めてくれた彼女だった。~その2~へ続きます】