情熱的な彼女に、理性は吹き飛んだ

その日、お店から出ると、彼女から指を絡めてきた。駅の改札の前で『どうする?』とハグをされ、彼女を恐れる気持ちが先に立ったが……。

「やはり僕にとって大切なのは妻と子供と今の生活を維持すること。これ以上、彼女と深い中になってしまったら、家庭を壊される可能性がゼロとはいえない。しかし、男とは悲しいもので、理性と欲望はまた別の問題。一度、彼女の手によって、“もう自分にはない”と思っていたことが、再び起こると、あの感覚を得たくなるものなんだよね。結局、流れで彼女とまたそういう関係になってしまった。不思議なことに、感情を爆発させた後の彼女は、妙に情熱的だった」

彼女から「浮気は私としかしていないよね」、「私のことを愛している?」と聞かれ、生返事を繰り返す。

「夏に彼女から旅行に行こうと言われたのだけれど、さすがにそれは断った。すると、つまらなそうな顔をしたんだ。彼女は自分に“溺れてくれる男”が欲しかったのかもしれない。だから、年上の僕を選んだんだろう。付き合ううちに彼女のことがいろいろ解ってきて、彼女のご主人は彼女よりも15歳年上の会社経営者で、離婚歴があり、とっくに成人した息子がいること。あとは、僕が思っているよりも、彼女がドライだということ」

結局、北澤さんは6回デートしたが、彼女の方から距離を置かれ、今は着かず離れずという状態だという。

「あんなに頻繁に送ってきたLINEも、今はこちらが送っても返事は遅い。SNSの投稿は見られないものが増えた。きっと彼女は僕に見切りをつけたんじゃないかと思う。もしかしたら、次の男を見つけたのかもしれない。これは、付き合った者同士だからわかるのかもしれないけれど、彼女はかなり奔放だ。それに、半年というのは、いい切り上げ時だと思う。心のどこかでホッとしつつも、これからもうあんな人は現れないんだろうな、って寂しく思うよ」

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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