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文/印南敦史

だしの魅力を実感する一冊|『世界一簡単なだし生活。』

いまから5年ほど前、『だし生活、はじめました。』という書籍に感銘を受けた。ひょんなことから「だし」の魅力にハマった著者が、すぐに始められる“だし生活”の楽しさを綴ったものである。

軽妙な文体は、とれたてのだしのように香り高く、だしについての好奇心を強くかきたててくれた。読み終えたころには居ても立ってもいられなくなり、アメ横に足を運んで鰹節と削り器を購入してしまったほどだ。

結局は長続きせず、私の“だし生活”は短期間で終わってしまったのだが……。

しかし、そんな苦い経験をしたからこそ、著者の2018年作『もっとおいしい、だし生活。』が改題、加筆修正され、『世界一簡単なだし生活。』(梅津有希子 著、祥伝社黄金文庫)として文庫化されたと聞いては無視するわけにいかなかった。

またもや、“だし心”をくすぐられることになってしまったのである。

『だし生活、はじめました。』では、顆粒だしとだしパックしか使っていなかったわたしが、毎日だしをとるようになるまでの成長物語を描いたが、本書では簡単すぎるだしの活用法もたっぷり紹介。料理のプロではないからこそ提案できる「ざっくりレシピ」は、きっと「これならできる」と思ってもらえるような、だしのおいしさがよくわかるシンプルなものばかり。意外と多い、「だしをとったはいいけれど、みそ汁と鍋以外、何に使ったらいいのかわからない」というお悩みも、きっと解決するのではないかと思う。(本書「まえがき」より引用)

とはいえ、「“だし生活”のなにが魅力なのか?」を知りたいという方も少なくないはずだ。そこで著者はまず最初に、「だし生活を今すぐ始めるべき8つの理由」を明らかにしている。

おいしい
かんたん
たのしい
減塩
太りにくくなる
意外と高くない
子どもの味覚を育てる
心と暮らしを整える
(本書14〜6ページより抜粋)

このように“理由”はいたってシンプルだが、しかし説得力に満ちてもいる。少なくとも、だしを避ける理由はどこにもなさそうだ。

だしをとるのは難しそうにも思えるが、やってみれば意外に簡単だ。たとえば著者の場合、試行錯誤を重ねた末にたどり着いたのは、「コーヒードリッパーでとるかつおだし」と、「麦茶ポットでつくる昆布だし」だった。

これら2種をベースに、煮干しだしや干し椎茸だしなど、なんらかのだしを冷蔵庫に常備し、料理や気分に合わせて使い分けているというのである。

この方法を取り入れることで、だしをとるという作業のハードルが一気に下がり、まったく面倒ではなくなったそうだ。たしかにドリッパーなら、ひとり分の汁物にもちょうどよく、鍋料理のだしが減ってきたときにも難なく追加できるだろう。

【ドリッパーかつおだし】
コーヒードリッパーにフィルターをセットし、かつお節をバサっと投入。熱湯を注ぐ。かつお節5gに熱湯180ml程度が目安。冷奴やおひたしなどに使う、小分けのパックだと一度に使い切れて便利。
(本書20〜21ページより引用)

ポイントは、新品のコーヒードリッパーを使うことくらい。普段コーヒーを淹れているドリッパーにはコーヒーの香りが染み込んでいるため、だし専用のドリッパーを用意するといい。

スーパーなどでも入手しやすい「メリタ」や「カリタ」でも、100円ショップのものでも十分だという。

他にもさまざまなだしのとり方が紹介されているが、「興味はあっても、なにから始めたらいいのかわからない」ということであれば、まずはここから挑戦してみてはいかがだろうか?

そして慣れてきたら、以後の章で紹介されている「ざっくりレシピ」を参考にしながら、だし生活を満喫できる料理をつくってみればいいのだ。

紹介されているのは、「ほうれん草のおひたし」などの定番から、シンプルな「だしスープ」、さらにはだし巻き卵風フレンチトースト」「だしカレー」などの変化球まで多種多様。もちろん著者がいうように、どれも簡単なものばかりだ。

さらには“その道のプロ”との会話や種材から学んだというテクニックやコツを明かした「プロに学ぶ だしとうまみの活用術」も掲載されているので、意外なほど利用価値は高い。

したがって初心者からセミプロまで、多くの人がだしの魅力を実感することができるだろう。一度は挫折した私も、本書を活用しながら改めて挑戦してみようと思っている。

『世界一簡単なだし生活。』

梅津有希子 著
祥伝社黄金文庫
720円+税
2020年6月
『世界一簡単なだし生活。』


文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。

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