取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、その時に感じた率直な思いを語ってもらう。
夫とは授かり婚。子どもができたことを誰も喜んではくれなかった
今回お話を伺った、詩織さん(仮名・46歳)は、24歳の時に紹介で知り合った男性と結婚、現在は兵庫県内の一軒家で旦那さまと一緒に暮らしをしています。しかし、この2人暮らしは、ただ一緒に暮らしているだけの家庭内別居だと言いますが、コロナ禍の影響で状況は変わってきているとのこと。
「結婚して、一人娘がいた時からずっと不仲で、会話はもって10分ぐらい。そして、娘が自立してからは私は2階に、夫は1階で生活しているような完全な家庭内別居生活に。まさに離婚していないだけ、という感じです。夫と話すのはいつも親戚が集まるお正月や法事のみ。しかし、今はこのコロナ禍で夫は毎日家に居て、義両親が常に我が家にやってくる状態になってしまいました。お互いの家族の前ではいい夫婦を演じてきたので今さら崩すわけにもいかず、息が詰まって仕方ありません」
詩織さんは兵庫県出身で、母親と4歳下に妹のいる4人家族。父親の印象は穏やかな人、母親の印象は感情の起伏が激しい人と、まったく違う印象で両親のことを語ります。
「娘2人で家族の中に男が1人だったということもあり、父親の立場はどこか弱くて、本人も何かを主張するようなタイプではありませんでした。いつも優しくて、怒られた記憶はありません。一方の母親は何か自分の思い通りに運ばないことがあると、すごいヒステリーを起こしたみたいに周りに当たり散らすような人。家族で出かける時はいつも母親の準備が遅くて待たされることが多かったんですが、誰かが文句を言ったら、『お母さんは家の用事を全部してからやから、仕方ないでしょ!!』と大声で。確かに私たちはお手伝いレベルのことしかできていないけど、絶対に歯向かえないような理由で遅れたという事実をなかったことにされるのがいつもすごく嫌でしたね。だから、私は今時間にルーズなタイプが一番嫌いです(苦笑)」
詩織さんは県内の大学へ進学し、4年の時に今の旦那さまに出会います。そして社会人になって2年が経過した時に結婚します。
「紹介と言いましたが、まぁ要は合コンです。学生と社会人の飲み会で夫は3つ上です。出会った時から気に入ってくれたのか、あちらからのアプローチで2人で遊ぶようになり、付き合いました。結婚は付き合って2年ちょいぐらいですね。結婚した理由は、子どもができたから。私は大学を卒業して、就職活動がうまくいかずに大学の頃からアルバイトをしていた飲食店で契約社員として働いていたんですが、入籍と同時に退職しました。
当時は授かり婚はまだ親世代にとっては理解しがたいことだったようで、お互いの親との顔合わせはすごくピリピリしていました。相手のご両親が私の両親に頭を下げていて、誰も純粋に子どもができたことを喜んではくれませんでした。そんな両親の姿を見て、夫も終始申し訳ない顔をしていたことを覚えています」
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