取材・文/坂口鈴香
前回は、室内での危険箇所をチェックし、危険回避策を紹介した。
今回は、屋外編として、家の周囲や道路での危険箇所をチェックしてみよう。
「平成29年版高齢社会白書」によると、60歳以上の高齢者が、外出時に障害と感じていることがらのうち、もっとも多いのが「道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭かったりする」ことだ。
危険を回避する策はあるのだろうか。前回に続いて、理学療法士で高齢者生活福祉研究所所長の加島守氏にお話を聞いた。
■家のまわりにも危険がたくさん!
●玄関ポーチ
玄関ポーチから庭、玄関の土や敷石までの段差に注意!
タイルになっていると、雨の日は特に滑りやすくなっています。
●門扉まで
砂利や敷石はバランスを崩したり、つまずいたりする原因になります。
また車いすの場合、砂利にキャスターが沈みこんだり、敷石に引っかかったりします。
●勝手口
段差が多く、狭いので危険です。
特に、物を持って段差を昇降するときはバランスを崩しやすい。玄関も同様です。
■家のまわりの危険箇所にはこんな対策を
玄関や勝手口には手すりがあるとよいでしょう。
玄関ポーチには滑り止めタイルやタイル用滑り止めテープもあります。
敷石は、できるだけ隙間を少なくして平らにするか、モルタルで平らにするとよいでしょう。
■外にもこんなに危険が
●道路と歩道
段差や水勾配による傾斜があり、つまずく危険があります。
●横断歩道や交差点
横断歩道を渡ったあと、乗りづらい歩道が少なくありません。
また交差点の歩道で信号待ちをしているとき、歩道が傾斜になっていることが多く、立ちづらいので平らな道路に出て待っている方がいますが、非常に危険です。
●砂利道や坂道
足をとられたり、バランスを崩したりしやすいです。
●階段やエスカレーター
足を踏み外したり、滑ったりしやすいです。
●歩行車を押しているとき
カゴや座面のついた歩行車(シルバーカー)を押している女性をよく見かけますが、手に体重をかけることができるため、前のめりになりがちです。
特に下り坂などはスピードが出すぎたり、斜め方向に前進してしまったりします。
■外の危険箇所にはこんな対策を
信号待ちでは絶対に道路に出ないこと。傾斜があって立ちづらいときには、できるだけ歩道の平らなところで待っているようにしましょう。
階段は手すりがついていればつかまり、エレベーターがあればそちらを利用しましょう。
また、外の砂利道や坂道はできるだけ避けた方が安全です。
スピード抑制機能が付いた歩行車があります。上り坂にはアシスト機能、下り坂にはスピード抑制、傾斜のある道で斜めに進んでしまう(片流れ)ときには、駆動輪の回転抑制がかかり、坂道を横断するときでもまっすぐに歩くことができるようなものもありますので、歩行車選びの参考にしてください。
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以上、今回は屋外での危険箇所とその回避対策を紹介した。
散歩や買い物など、外出する機会は多い。筋力アップのために、毎日外に出かけるという人も多いだろう。
屋外での事故は、重大な事故につながりやすく命の危険にも直結する。健康対策が逆効果となっては元も子もない。
危険箇所に対策をしておくほか、対策のむずかしい箇所では、あらかじめ危険箇所を知って、そういった場所を避けることも身を守るためには肝要だ。
談/加島守 先生
1980年、医療ソーシャルワーカーとして勤務後、理学療法士資格取得。越谷市立病院、武蔵野市立高齢者総合センター補助器具センター勤務を経て2004年10月に高齢者生活福祉研究所設立、所長
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。