祖母、母の介護を弟はずっと担っていた

祖母の葬儀では、両親とは表面的な会話しかなく、葬儀で忙しく動き回る弟ともゆっくり話す機会はなかった。どうしても気になることがあり、弟に連絡したことが家族が再び連絡を取り合うきっかけになったという。

「葬儀で歩行時に杖を使って歩く母親の姿があったのです。何の病気に罹っているのか、それが気になって後日弟に電話をしました。弟とは葬儀で連絡先を交換していたので。

弟に話を聞くと、母親は関節リウマチで要介護認定を受けているとのことでした。私は病状が聞きたいだけだったのですが、弟から『そんなに気になるなら、直接、母の様子を見に来たらいい』と焚きつけられ、その場で母親に電話を代わられたんです。母親の声はとても優しくて、会いたいと思わせるものでした。誘われるがままに、実家に行くことになりました」

実家は母親が過ごしやすいよう、手すりを付けるなどリフォームされていた。母親と弟は笑顔で、父親は緊張したような少し強張った顔で出迎えてくれたという。

「私も緊張していて、何を話したのかあまり覚えていないんです。両親とは次に妻と孫を連れてくるということで話を終え、その後は弟と2人で飲みに行きました。弟は介護福祉士の資格を取って、リハビリテーション病院で働いているとのこと。祖母の介護と母親のリウマチ発症の時期が重なったことで、介護を行ううちに資格を取ることにしたそうです。その話を聞いて、私は自然と弟に対しての謝罪と、ありがとうという感謝の言葉が出てきました。

振り返ってみると、私の長年のわだかまりはすべて親がしたこと。その矛先を弟に向けてしまって、弟も被害者だったのかもしれないと思ったのです」

祥太郎さんと両親の関係は、頻繁に連絡を取り合うようにはなれていないものの、その仲介役を弟が担ってくれているという。親の介護は、バラバラになったきょうだいが再び連絡を取り合うきっかけになることが多い。過去の祥太郎さんは弟と対面する機会を避けていたが、これからはいかに本音を伝えて協力し合うことが大切になるだろう。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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