家族にも限界が来ている

怒鳴られ続けて、中道さんの体にも変調が表れている。1年前には仕事中に倒れて入院することになった。40度の高熱が数日続いたが、原因はわからないままだ。

子どもたちへの影響も見逃せない。

社会人の長女は、「お父さんのことが嫌い。もうこれ以上嫌いになりたくない」と言っている。大学生のころは家に帰るのが遅かったので、あまり父親の姿を目にすることがなかった。今は伸一さんに怒鳴られ、振り回される中道さんの姿を見て、「離婚して。私がお母さんを養うから」と言うようになった。

長男は今大学生だ。

「高校受験のときはスポーツ推薦で私立高から声がかかりましたが、今後の家計を考えるととても私立に行かせることはできません。そのころは病名もはっきりせずに、事情を担任に伝えることもできませんでした。だから公立のランクを下げるしかなくて、本人が希望しない高校にしか行けず、ずいぶん恨まれました。でも大学受験のときは、高校の先生が地元の条件の良い奨学金を取り付けてくれて、返済不要の奨学金を借りることができたんです。東大京大クラスの人しか受けられないのに、本当に感謝しています」

中学のときは精神的に追い詰められていたようで、最近になって「あのときは死にたかった」と打ち明けられたという。

自身はもちろん家族みんなに限界が来ているのはひしひしと感じている。

40代で認知症になった夫|「助けを求めても何も変わらなかった」【4】に続きます。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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