
実にありがたいことに、人生をやり直せる時代になりました。人生百年時代となった今では、定年退職は、第二の人生のスタートようにいわれています。溢れる情報に惑わされず、巧妙で狡猾な罠を見破り、第二の人生を生きなければなりません。しかし、自分だけの知識や経験だけでは心許ないところもあります。ならば、賢者の知恵を頼みとするのも一つの方法ではないでしょうか?
そうした賢者が残した一つの言葉をご紹介します。今回の座右の銘にしたい言葉は「猿も木から落ちる(さるもきからおちる)」 です。
目次
「猿も木から落ちる」の意味
「猿も木から落ちる」の由来
「猿も木から落ちる」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「猿も木から落ちる」の意味
「猿も木から落ちる」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「木登りがじょうずな猿でも時には誤って落ちる。その道にすぐれた者でも、時には失敗することがあるということのたとえ」とあります。
この言葉の背景には、人間らしさを肯定する含蓄が込められています。誰もが失敗をする現実を受け入れること、それをチャンスに変えることが人生において重要だと示唆しているのです。
さらに、シニア世代の長い人生経験に照らすと、この言葉には「失敗を恐れずに挑戦する勇気」を育むメッセージがあるといえるでしょう。
「猿も木から落ちる」の由来
「猿も木から落ちる」の起源は正確にはわかっていません。しかし、猿は機敏で木登りが得意な動物の代表であり、その猿でさえ失敗するという例えは、古くから人々に教訓を与えてきました。時代を超えて語り継がれてきたこの言葉は、現代社会においても、私たちに大切なメッセージを伝えています。

私たちは、長年の経験から多くのことを学び、知識や技術を身につけてきました。しかし、それでもなお、完璧ではありません。時には、思いがけない失敗をすることもあります。
「猿も木から落ちる」は、そのような人間の不完全さを端的に表しています。どんなに得意なことでも、油断や慢心があれば失敗する可能性があるのです。
しかし、失敗は終わりではありません。むしろ、そこから新たな学びを得るチャンスです。なぜ失敗したのかを分析し、反省することで、同じ過ちを繰り返さないようにすることができるのです。
「猿も木から落ちる」を座右の銘としてスピーチするなら
「猿も木から落ちる」を座右の銘としてスピーチする際は、単なる失敗談にならないよう注意してください。この言葉が持つ「失敗から学び、成長する」という教訓を強調し、前向きな姿勢を示すことが大切です。謙虚さと共に、経験から得た学びを共有しましょう。以下に「猿も木から落ちる」を取り入れたスピーチの例をあげます。
謙虚さと用心深さの必要性を語るスピーチ例
本日は、私の座右の銘「猿も木から落ちる」についてお話しさせていただきます。
30年のキャリアの中で、最も印象に残っているのは、大型プロジェクトでの失敗です。経験を過信し、チェック体制を簡略化してしまった結果、顧客に大きな迷惑をかけてしまいました。その時、恩師から「猿も木から落ちる」という言葉を贈られました。
この言葉は、単なる言い訳ではありません。むしろ、プロフェッショナルであればあるほど、謙虚さと用心深さが必要だという戒めです。以来、この失敗を教訓に、経験者という過信を捨て、初心の緊張感を大切にしています。
また、この考えは若手の指導にも活かされ、失敗を恐れず、しかし慎重にチャレンジする組織文化の醸成にもつながっています。
最後に
人生経験を重ねたシニア世代だからこそ、この言葉の真価を理解し、活かすことができます。完璧を求めすぎず、かといって怠ることなく、しなやかに生きていく。そんな生き方の指針として、「猿も木から落ちる」を座右の銘に選んでみてはいかがでしょうか。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
