実にありがたいことに、人生をやり直せる時代になりました。人生百年時代となった今では、定年退職は、第二の人生のスタートといわれています。溢れる情報に惑わされず、第二の人生を生きていきたいものです。しかし、自分だけの知識や経験だけでは心許ないところも……。ならば、賢者の知恵を頼みとするのも一つの方法ではないでしょうか?
そうした賢者が残した一つの言葉をご紹介します。第42回の座右の銘にしたい言葉は「石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)」です。
目次
「石橋を叩いて渡る」の意味
「石橋を叩いて渡る」の由来
「石橋を叩いて渡る」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「石橋を叩いて渡る」の意味
「石橋を叩いて渡る」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「堅固に見える石橋でも、なお、安全を確かめてから渡る。用心の上にも用心深く物事を行うことのたとえ」とあります。
この言葉は、物事に慎重に取り組む姿勢を表現しています。「転ばぬ先の杖」とも言い換えられます。慎重に物事を進めることの重要性を説いた言葉であり、リスク管理の原点ともいえるでしょう。
「石橋を叩いて渡る」の由来
江戸時代、橋は主に木造で作られており、その耐久性に大きな問題がありました。そんな中、石造の橋は非常に貴重で、作るのが困難な代表的な「頑丈な橋」でした。
当時の人々は、たとえ石橋のように頑丈そうに見える橋でさえ、渡る前に叩いて安全を確認する習慣がありました。これは、見た目の堅牢さだけを信じず、慎重に状態を確認してから行動するという知恵を象徴しています。
つまり、「石橋を叩いて渡る」という言葉の本質は、どんなに安全そうに見えるものでも、慎重に確認してから行動することの重要性を教えているのです。この教えは、単なる橋を渡る行為を超えて、人生のあらゆる判断や決断において、慎重さと用心深さの重要性を示唆することわざとなりました。
「石橋を叩いて渡る」を座右の銘としてスピーチするなら
スピーチでは、この言葉を単なる慎重さではなく、前向きな姿勢として伝えることが重要です。また、自身の経験を交えながら、この座右の銘がどのように成功や成長につながったかを語ることで、説得力が高まります。以下に「石橋を叩いて渡る」を取り入れたスピーチの例をあげます。
慎重さと大胆さのバランスが大切であることを伝えるスピーチ例
今日は、座右の銘である「石橋を叩いて渡る」という言葉についてお話したいと思います。この言葉は、一見すると、非常に慎重で、臆病な印象を与えるかもしれません。しかし、私にとってこの言葉は、リスク管理の重要性と、確実な成功への道を示す指針となっています。
「石橋を叩く」とは、私にとって、準備を徹底することです。新しいプロジェクトに取り組む際には、まず入念な情報収集を行ないます。市場調査、競合分析、そして顧客のニーズ把握。これらを怠ることなく行なうことで、潜在的なリスクを洗い出し、対策を練ることができます。
例えば、先日、新規事業の立ち上げを任された際には、3か月かけて市場調査を行ない、競合他社の動向を分析しました。その結果、当初想定していなかったリスクを発見し、事前に対応策を講じることができました。これはまさに、「石橋を叩く」ことで得られた成果です。
しかし、「石橋を叩く」だけでは不十分です。大切なのは、「渡る」こと、つまり、行動に移すことです。いくら綿密な準備をしても、実際に行動を起こさなければ、何も変わりません。準備が整ったら、勇気を持って一歩踏み出す。これが成功への鍵となります。新規事業の立ち上げにおいても、綿密な準備に基づき、リスクを理解した上で、挑戦することを決断しました。
「石橋を叩いて渡る」は、慎重さと大胆さのバランスの大切さを教えてくれます。常に石橋を叩くのではなく、状況に応じて柔軟に対応する。時にはリスクを取って、大胆な決断をすることも必要です。私は、この言葉を胸に、慎重さと大胆さのバランスを保ちながら、目標達成に向けて努力していきます。
最後に
「石橋を叩いて渡る」は、人生の様々な場面で役立つ知恵です。この言葉を座右の銘として、慎重さと大胆さのバランスを保ちながら、豊かな人生を歩んでいきましょう。人生100年時代、第二の人生をより充実させるためにも、この言葉を心に留めておいてはいかがでしょうか。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com