更年期障害を夫に理解してもらいたいと思えなかった
更年期障害によって性交痛があっても、出血することがあっても夫を拒めない。さらに、更年期障害の症状である睡眠障害や倦怠感も伴い、うつ症状が出てくるようになった。
「さまざまな症状によって仕事もちゃんとできなくなっていきました。更年期障害の漢方なども試したのですが、なかなか症状が改善しなくて、ついには仕事をやめることにしたんです。夫もそうしていいと言ってくれたので。
でも、家という閉鎖的な空間の中で夫の帰りだけを待つだけの生活、そして少し辛いと伝えてもなくならない性行為に疲れ切ってしまって……。そこから逃げたい思いから私は実家に戻り、別居状態になりました」
母親は当時50代で更年期障害の真っ最中だった。母と娘が同じ症状で悩んでいたことで相談しやすかったという。
「親の性生活なんて聞けないし、私たち夫婦の性生活も伝えられなかったんですが、更年期障害の症状としての相談はできました。実家に戻って、心が少し楽になりましたね。
それと同時に、30代の私が更年期障害になり、夫に我慢させる生活がこれからずっと続くのが申し訳ない気持ちになりました。でも、私もこれ以上は我慢できなかった。だから、夫と別れようと思いました」
夫と話し合うも離婚について夫は拒否し、平行線に。しかし、別居状態が長く続いたことで40歳のときに2人は離婚した。
「10年間の投薬を終えて、その後は数か月に一度という不規則なペースで生理は戻ってきました。今はその間隔が長くなってきています。その間ずっと更年期症状が続いていたのですが、体に合う漢方薬も見つかり、今は穏やかな気持ちで過ごせています」
更年期障害の体調不良や気力の低下などにうまく対処できなかったことで仲が悪化してしまう夫婦は多い。妻は体調の変化に気づけない夫に不満をぶつけるケースが多いが、佳菜子さんの場合は、妊娠できないという負い目によって夫にぶつけられずにいた。自分の意見を伝えることにもパワーが必要。そのパワーがなければ、離れること、離婚を選択することは悪いことだとは言い切れないはずだ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。