2024年11月14日、自民党は党の政務調査会内の「治安・テロ対策調査会」を「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」に組織再編する方針を固めたという報道がされた。この背景には、SNSを通じた相次ぐ闇バイト強盗事件の発生がある。
義也さん(65歳)は「闇バイトは若者のイメージが強いがそうではないと思います。定年後は、お金の不安と、“社会のお荷物になっている”という感覚がのしかかる。仕事を探せば断られ、私もあわや“闇バイト”に手を出しそうになったのです」という。
同じ仕事をしていても、手取りが15万円減る
義也さんは高等専門学校卒業後、プラスチック加工関連企業に入社、60歳の定年後、63歳まで雇用延長して働いた。
「営業と現場の調整が私の仕事です。定年後も同じ仕事をしているのに、手取りが15万円も減り、会社から裏切られたような気持ちになりました。ウチの会社は社員100人以下の中小企業で、同期や先輩との仲はいいですが、仲間内で給料の話はしなかったんです」
義也さんの会社は、役職定年がない。再雇用の給料は「減るよ」とは言われていたが5〜7万円程度だと思っていたという。
「予想額の倍以上ですからショックでした。とはいえ、私の場合、2人の子供は結婚して独立しているし、妻も離婚して別の男性と結婚している。持ち家だし、お金もかからない。“バイトするよりは割りがいいだろう”と自分を納得させて働くことにしたのです」
高専卒入社組、同期のエースだった男性は、50歳で父になっていた。彼の娘は定年時に10歳、給料の激減ぶりに驚いていたという。彼は「高専卒はどんだけ頑張っても、役員になれないんだよな」とぼやいていた。
「会社員は使い捨てなんだと痛感しました。それに、雇用延長して働いているとき、30〜40代の若手社員から、あからさまに無視されたり、お荷物扱いされることもありました。前はそんなことはなかったんですよ。そういう嫌がらせの背景には不満や不安があり、そのはけ口は弱いものへと向かう。ウチの会社は業績が不安定なんじゃないかなと思ったら、その通りになりました」
原油高と円安、サプライチェーンの変化、流通コストの高騰で、会社は少しずつ傾いていった。
「さらに給料も減らされた63歳のときに、会社を辞めたのです。気軽な独身だし、嫌な思いをしてまで働くことはない。それに会社が傾いていくのをみるのも辛いですからね。それなりの蓄えはあるので、自炊をして時々アルバイトをして、慎ましく生きていれば、息子や娘に面倒をかけることはないだろうと思いました」
会社を辞めた後、「人手不足だから、仕事はあるだろう」という考えは大間違いだった。
「デスクワークの仕事は全滅。マンション管理人や清掃員は少ない募集に多くの人が詰めかける。となると、経験者を採用しますよね。常に募集をしているのは、ブラックな職場だったり、給料が安かったりする求人ばかり。警備員でもやろうかと思いましたが、寒さや暑さに耐えられるとも思わない。年齢を重ねると、働く場所は限られると痛感し、プライドもかなり傷付きました」
不採用の通知が来るたびに傷つき、収入源がなくなると、極力出費を少なくしようというのが、人間心理だ。
「タイミング悪く、築40年の自宅の雨どいが詰まり、その修理と交換に10万円、給湯器の故障の修理に20万円、固定資産税の請求が4万円など立て続けにやってきて、“これは無理だ、働かないと”と思ったときに、同期のエースだった男性から“仕事を頼みたい”と連絡があったのです」
【同期は闇バイトに手を出していた……次のページに続きます】