社会に出て仕事経験を積んでいくと、「自分はこの先どのように働くべきか」という問題につきあたることはよくあることだと思います。将来のキャリアプランは、誰にとっても重要なことです。現在の仕事のスキルを磨いて社内で昇進を目指すのか、経験を活かして転職でステップアップを図るのか迷う人もいるでしょう。

中には全く異なる世界に挑戦したいと考える人もいます。経験したことのない業界や、職種に転職することをキャリアチェンジと言います。今回はキャリアチェンジについて、人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
そもそもキャリアチェンジとは?
キャリアチェンジの年齢は
シニア世代のキャリアチェンジ
シニア世代がキャリアチェンジを成功させるポイント
まとめ

そもそもキャリアチェンジとは?

高年齢者雇用安定法の改正などにより、今や60歳以上の就業は一般化し、65歳以上、70歳以上で働く人の数も増えました。長い仕事人生を考えると、今の仕事を続けていくかどうか悩んだことがある人は多いと思います。もちろん今までの経験を糧に、さらに研鑽を積んでいくのは素晴らしいことです。

しかしながら、今の仕事に不満を持っている、あるいは別にやりたいことがあるという人も少なくはありません。そこで、今まで経験のない仕事や職種に転職する選択肢が出てきますが、これがキャリアチェンジと呼ばれているものです。

未経験の分野に挑戦することは、転職の条件としてはハンディがあることは否めません。経験値がない場合、給与などの待遇面では、今までより落ちる可能性は高いといえます。ただし、成長の著しい業界などでは、経験を重視していない場合もあります。現在の会社や仕事に満足していない場合は、思い切ってキャリアチェンジを考えるのも悪いことではありません。

キャリアチェンジの年齢は

キャリアチェンジする年齢は、何歳くらいがいいのでしょうか? これに関しては、ある程度シビアな現実を受け止めなければなりません。転職市場の状況からすれば、未経験分野への転職は若いほうがいいのは確かです。ただし、若ければなんでもいいというわけではありません。

仕事をした経験があまりにも浅い場合、社会人としての常識や基本的な能力に欠けていることもあるからです。具体的に言えば、比較的高い条件でキャリアチェンジできるタイミングは、20代後半あたりが一般的だといえるでしょう。もちろん、30代、40代でキャリアチェンジする人もいます。

キャリアチェンジする際に考えておきたいこと

今までの仕事とは無関係の業務だとしても、社会人としてのコミュニケーション能力や、業務を整理する能力などが間接的に役立つことの多い年齢と言えます。ただし、ある程度年齢が高くなってからの転職だと、専門性や経験の豊富さを求められることが多いので、希望通りの職を探すのは難しいかもしれません。

キャリアチェンジを考える際には、自分の都合だけでなく、配偶者の仕事や子どもの進学など、家庭の状況を十分に考慮して時期を決めることも重要です。

シニア世代のキャリアチェンジ

なかには定年間近になってから、あるいは定年後にキャリアチェンジを考える人もいます。シニアのキャリアチェンジには事前準備が重要なカギになります。あらかじめ、目指す業界・職種の仕事内容や、シニア採用の条件などを調べておくといいでしょう。

会社員の場合、定年後は自社の再雇用制度など利用して仕事を続けるケースが最も多く見られます。再雇用に比べ、キャリアチェンジは、自分がやってみたかった仕事や希望する働き方を、自由に選択できるメリットがあります。ただし、経験のない新しい世界に飛び込むことは、思い通りの待遇が得られない可能性も覚悟しておかなければなりません。

シニア世代の転職で未経験の仕事を選ぶ場合は、給与などの条件面では多くを望まず、自宅から近い、時間的余裕ができるなど、生活面の視点も加えて考えるといいでしょう。また、夫婦で飲食店などを開く、行政書士・社会保険労務士などの士業の資格を取得して開業するという起業の道もあります。定年後は宮仕えを離れ、事業を立ち上げて夢を叶えたいという人もいるでしょう。

ただし、起業するためには、事前の準備と資金計画が必要なのは言うまでもありません。資格の取得などを考えている場合は、雇用保険の教育訓練給付などを利用できますから、在職中に取得しておくことをおすすめします。

シニア世代がキャリアチェンジを成功させるポイント

シニア世代がキャリアチェンジを成功させるためには、健康で働く意欲・体力があることが基本ですが、それ以外にもいくつかのポイントがあります。一つ目のポイントは、余裕を持って準備することです。まず自分はどんな仕事がしたいのか、どのように働きたいのかしっかりと考えておきましょう。

自分ひとりだけで悩まず、ハローワークのほか、シニアを対象とした求人サイトや転職エージェントなどに相談して客観的な判断を仰ぐのも一案です。仕事選びには十分な時間をとり、キャリアチェンジする理由を自分の中で明確にして仕事を探しましょう。

勤務地や勤務日数、労働時間などを重視するのか、自分の趣味や興味の視点で選ぶのか、人それぞれ選ぶ基準はあると思います。こうした選択の自由度があるのが、シニアのキャリアチェンジのメリットだといえます。

キャリアチェンジ後の生活設計

二つ目のポイントは、キャリアチェンジ後の生活設計について、しっかり考えておくことです。働く目的や希望する環境、経済面の見通しなどについては家族ともよく話し合っておきましょう。

特に起業を考えている場合は、転職よりさらに事前準備が必要ですし、家族の協力も欠かせません。三つ目のポイントとしては自分が意欲を持てる仕事を探すことです。自分の得意分野や趣味を活かして楽しく働くことも、キャリアチェンジの成功例の一つといえます。

まとめ

シニア世代になってからキャリアチェンジをするのは、それなりに勇気がいることでもあります。思い通りの仕事が見つかるとは限りませんし、経済的にはマイナスになる例も少なくはありません。けれどもキャリアチェンジは、新たな喜び、やりがいを見つけるチャンスでもあります。

自分の好きな仕事や希望する働き方を選択して、充実した生活を送っているシニアも数多くいます。キャリアチェンジを成功させるには、新しい環境を柔軟に受け止め、前向きな気持ちで働くことが大切です。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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