両親が妊娠アウティングの環境から救い出してくれた
流産してしまったことを夫も義両親も慰めてくれた。しかし、それだけでなく義実家の近所の人からも慰められたという。義母が周囲に「嫁が妊娠している」と勝手に言いふらしていたのだ。
「妊娠を勝手に言いふらしたことは、めでたいという気持ちからだということはわかっています。でも、さらに傷つけられた気分です。ほとんど知らない近所の人から『次は大丈夫』と言われる気持ちがわかりますか?」
1か月も経つと義両親と夫は再び子作りを求めてきたという。
「しばらくは体調が悪いと夫には断っていたんですが、知らない土地で知り合いもいなくて、仕事もしていない。そうなると、子どもを産むことしかすることがないと思ってしまうんです。
再び妊活をして、4か月後に妊娠がわかりました。そのときに、口止めしたのに夫がまた義両親に言い、義母は周囲に言いふらしました」
夫と義母に対するストレスに妊娠中の不安定さもあり、どうにかなりそうだった麗子さんは母親に電話をして助けを求めた。
「母親は『帰ってきなさい』と言いました。そして、その夜に両親は車で私を迎えに来てくれました。父は夫に『妊娠中で不安定なので里帰り出産をさせます』と伝えて、その日のうちに実家に帰りました」
その後、麗子さんは無事女の子を出産。一度は義実家の近くのマンションに戻り3人で生活を始めたが、夫との関係が悪くなり、離婚したという。今は実家近くで娘との2人暮らしをしている。
義母がした嫁の妊娠を周囲に言いふらす行為は、妊娠アウティングと言われるもので、当初は職場での問題として注目されていた。しかし、今は義両親に対するものでもあるという。妊娠はプライバシー性が高いもののはず。言いふらすという行為は、悪意ではないからいいというものではない。妊娠を言いふらされた妊婦には過大なストレスを与えているという事実を直視してもらいたいものだ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。