写真はイメージです

団塊の世代が75歳を迎える2025年はもうすぐだ。厚生労働省はこの年をめどに、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指してきた。目的は、高齢者が可能な限り住み慣れた土地で、自分らしい暮らしを最後まで続けることだ。とはいえ、人間は老いや病いには抗うことは難しい。

康史さん(63歳)は、「誰かの役に立ちたいと、半年前から自治体の生活支援員をしています。これが自分の老いの練習になっているんです」と語る。

「40年も働けば、仕事に飽きる」

康史さんは新卒から勤務していた食品メーカーで、60歳の定年を迎えた。

「高専を卒業してから40年、ずっと同じ会社にいて、製造現場から入って、営業に抜擢されて、商品開発をして、材料の調達をして……と、まあ有意義な会社員生活でした。地方に本社があるにも関わらず、30歳からは地元の東京で生活できましたし、海外勤務もさせてもらいました」

獅子のような容貌をしており、コワモテに見えるが笑顔が優しい。さらに健康的で、ガッチリとした体型の康史さんは、多くの人に信頼されたのではないだろうか。

「仕事はできたほうだと思います。ただ、高専卒だから部長以上にはなれなかったんですよ。上場企業ではありませんが、地方では冠番組を持っているし、かつては全国ネットにテレビCMを打っていた程度の規模ですから、学歴は重視されました」

もちろん、雇用延長の声もかかったというが、断ったという。

「学卒の人よりも2年多く働いているから、仕事に飽きたというのも大きい。それに物事には潮時がある。今、メディアでは“死ぬまで◯◯”というのが流行っているじゃないですか。よく見るのは性交渉。あとは美食やお酒もあるし、あと旅行もありますよね。でもいずれも、会社に所属して毎日、出勤しなければならないとなると、実現は難しい」

康史さんは55歳くらいから体力、新陳代謝の低下を痛感。美食や深酒をしてしまうと、回復に数日を要し、性交渉に至っては興味すら湧かないという。

「それは結婚30年のカミさん(58歳)も同じ。同世代同士で結婚したのは、この歳になると、人生で最高の幸せだったかもしれない。一緒に苦労して、一緒に老いていく。そういう相手がいるというのは、本当にありがたいです。“一緒に子育てした”とも言いたいけれど、カミさんに“あなたは何もしなかった!”って怒られそうなので言いません(笑)。でも僕は、息子(30歳)と娘(28歳)の大学までの学費を出した。カミさんも、そこはほめてくれています」

看護師をしている妻との関係は良好だという。子供たちはすでに家庭を持っている。息子のところには、孫が2人いる。娘のところはまだだが、なんの心配もしていない。

【旅を続けて「誰かの喜ぶ顔を見るために生きている」と感じた……次のページに続きます】

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