取材・文/沢木文
親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。
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彰人さん(仮名・70歳)は、有名国立を出て官僚として活躍した経歴を持つ。今10年間会っていないという息子の言うままにお金を出していたら、1500万円以上がなくなっていたという。
【これまでの経緯は~その1~で】
妻が子供たちを甘やかしすぎていた
彰人さんは10年前に59歳で亡くなった妻のことを愛してはいるけれど、子育ては失敗したと思っている。
「僕も妻も大学を出ているのに、ウチの子2人はまともに卒業できていない。長男は水商売みたいなことをしており、私が望んでいた勤め人とは程遠い。安定してほしかったのにどうしてこんなことになってしまったのか」
長男に、お金を渡しすぎて、妻が末期がんで苦しんでいても、治療費すらなかったという。
「免疫細胞治療とか、いい方法があったのに。金が出せなかった。妻も迷惑をかけたくないといい、あれよあれよと悪くなって死んでしまった。葬式の日に、あまりに子供たちがしれっとしているので、“ママを殺したはお前たちだ”と言ってやったんです」
妻は家族をまとめている扇のかなめであり、大地のような存在だった。
「それはそうなんだけれど、甘やかしすぎたよね。特に息子はそう。店を出す資金、潰す資金、飲食店に勤務して持ち逃げした金……実際のところいくらかかっているんだろう」
直近においても、息子は勤務していた飲食店の売り上げを持ち逃げして音信不通になったという。
「社会人として失格なんですよ。なんというか、“負けグセ”っていうの? 自分で独立する気概もないのに、負けグセだけがついている社員。言い訳だけが上手になって、何の向上もしていない。ふざけているよ」
【息子が勤務していた飲食店から、100万円を請求され支払った。次ページに続きます】