浮いた話がないことで女友だちとの仲を疑われた
姉が出産したのは24歳のとき。香菜さんは当時大学生で精神的な親離れをしてもいい時期だったが、まだ家族の中心にいたいという気持ちが強かった。香菜さんを差し置いて家族の中心となった姉の存在が疎ましかったと振り返る。
「姉よりも私のほうがかわいいと両親は当然に思っていて、それは揺るがないものだと思っていました。なのに、それが崩れた。一気に家が居心地悪くなりました」
香菜さんは就職を機に友人とルームシェアをすることを決め、実家を出ることにした。そこから友人が結婚するまでの5年間、女友だちと一緒に暮らしていた。その5年の間にあった親からの発言でずっと心に残っていることがあるという。
「実家を出てからも、大型連休のときには帰省していました。親と不仲になって家を出たわけではなかったので。でも、ある一言から親を軽蔑するようになって、徐々に距離をとるようになりました。浮いた話も一切なく、女友だちとルームシェアを続けている私に向かって、母は『もしかして女性が好きとか言わないわよね。やめてよ』と言ったんです」
香菜さんは友人に対して恋愛感情を持っていなかったのでその発言をすぐに否定したが、偏見の強い母親と顔を合わすことに対してストレスを感じるようになった。
「ルームシェアをしていた女友だちが結婚して一人暮らしを始めるときに連帯保証人になってもらうために帰省していたんですが、そのときにも母は女友だちの結婚を知って『ホッとしたわよ』と言っていました」
親はいつまでも恋愛しない私に軽蔑の目を向けるようになる。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。