取材・文/ふじのあやこ

写真はイメージです。

昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたことや、親について、そして子供について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。

ゴールデンウィークが明け、4月から新しい環境になった人たちがその環境の変化についていけず、無気力になるなどのメンタル不調を発症することが毎年多くのメディアで取り上げられている。しかし、5月に限らず、セクハラやパワハラなどのハラスメントは増加しており、今や社会問題になっている。andmedia株式会社が運営するMEDIA PRESSと、あしたのクリニックが共同で「ハラスメントと鬱」に関する調査(実施日:2023年9月23日~2023年9月26日、有効回答数:全国20代~60代の男女105名、インターネット調査)を実施。調査では、職場で日常的に何らかのハラスメントを受けている人が8割以上もいることがわかった。さらにそこから職場でのハラスメントによってうつ病になった人は3割を超えている。

今回お話を伺った武志さん(仮名・44歳)は支配的な父親の元で育つ。第一志望の高校に落ちたことで父の期待を裏切ったという思いが強く残り、父親から逃げるように高校卒業後には伯父の家に移っていた。伯父の家から通う専門学校の学費は親と借用書を交わし、借金して進学していた。【~その1~はコチラ

順調だった暮らしはコロナで一転した

親への借金を返済後に伯父の元を離れ、付き合っていた女性と同棲を始める。一人暮らしの期間が一切ないままの同棲ではうまく相手女性との関係を作ることができず、同棲は1年半で解消となった。

「今まで、親や伯父と一緒に暮らしていて、自分で何かを決めることがなかったんです。だから彼女と一緒に暮らして、決断を迫られたときに何もできなかった。それが彼女をイライラさせてしまって、別れないまでも同棲を解消しようとなりました。

思い返せば、専門学校以外の進学先はずっと父親が決め、専門学校は伯父が決めていたし、就職先はアルバイトしていたときに誘われたからでした。同棲も彼女からの提案で、自分で何かを決断したことが一度もなかったんです」

同棲解消後もその女性との付き合いは続いた。2人は家を2つ持ち、1つは仕事場として、もう1つは住居として住民票を一緒にするように手続きし、事実婚を選択した。

「お互いが対等の立場のままでいられるから、結婚よりも事実婚のほうがいいかなと思って。それに、結婚となると家同士の付き合いもあるから、それも嫌だったんです。でも、これも父親の影響からですよね。結婚によって対等な関係から上下関係になると思っていたんですから。

彼女も結婚願望があまりなかったので、双方の同意の元、事実婚を選びました」

仕事もプライベートも充実していた中、コロナ禍に見舞われて生活が一転する。仕事は案件が減り、人員整理が行なわれた。武志さんは対象外だったが、人が減った分多くの仕事がのしかかってきた。それに加え、父親がコロナ禍で休職状態になり、その間に足腰が弱ってしまい仕事に復帰することなく退職に。「長男の役割だ」と武志さんは実家の近場で暮らすことを父親から強いられたという。

「『今は大丈夫だが、何があったときのため』とのことで一緒に暮らす必要はなく、近場で暮らせと言われたんです。幸いにも私の仕事は家でもできる仕事だったので、親に言われるがままに実家近くに引っ越しました。

彼女とは離ればなれになったり、新しい仕事をリモートで行わなければいけないなど、環境の変化に体も心も疲弊していきました」

【「親だから」「子だから」の呪縛。次ページに続きます】

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