
健康な心身を保ちながら、これからもずっと本格焼酎を楽しみたい──。焼酎に限らず、お酒好きの読者なら誰しも思うところだ。
そこで、本格焼酎をおいしく楽しむためには、どのような付き合い方をしていけばよいのかを、肝臓専門医の浅部伸一さんに聞いた。浅部さん自身も本格焼酎が好きで、料理と一緒に芋焼酎を楽しむことが多いという。
本格焼酎は糖質とプリン体がゼロで低カロリー、さらに血液をサラサラにしたり、その香りがリラックス効果をもたらすことなどが、研究成果として発表されている。本格焼酎の健康効果について、浅部さんはこう話す。
「蒸留酒である本格焼酎には不純物が残りにくいので、ほかの酒類に比べて健康的な酒といえるでしょう。血液の溶解を促すプラスミンをつくるウロキナーゼを分泌するなど、血栓予防の効果も研究発表されています。ただし、焼酎は薬ではないので、あくまで効果が期待できるかもしれないということです。当然、たくさん飲めば体に負担をかけ、ほかの病気を引き起こすことにもなりかねません」
厚生労働省が推奨する1日の純アルコール摂取量は20g 以下、25度の本格焼酎であれば約100mLだ。ロックだと2杯弱程度である。
「左党はこれでは満足できないですよね。アルコールの適正な摂取量は人にもよるので一概にはいえませんが、日頃からたくさん飲まず、禁酒日も設けていれば、たまには少し多めに飲んでもよいのではないかと思います。ただし酔うために飲むのはよくない、お気に入りの焼酎は料理と一緒に時間をかけて味わい、楽しんでもらいたいですね」
浅部さんは好物の豚しゃぶを食べるときに、芋焼酎を飲むことが多いという。
「本格焼酎はすっきりしているので、豚しゃぶや中華料理など油っこい料理とよく合います。これがビールだとつい量が過ぎてしまうこともありますが、焼酎ならチビリチビリ飲むので、まず飲み過ぎる心配がありません」
食事をしながら本格焼酎をゆっくり楽しむのが浅部さんの流儀。
「日頃は節制していますが、先日夫婦で旅行に出かけた鹿児島では、名物をいただきながら地元の芋焼酎をたくさん飲みました」
飲み方にメリハリをつけることが肝心なのである。
肝臓の働きをサポートする食事を心がける



豚肉、豆腐、納豆などは肝機能の働きを助ける栄養素を含み、飲酒と相性がよい。浅部さんの好物の豚肉はビタミンB1が豊富、アルコール代謝で消費されるビタミンB1を補ってくれる。
食事とともに適切な量を
お湯割り、ロック、水割り、ソーダ割りなど好みの飲み方ができるのも本格焼酎の特徴だ。
「25度という度数もウイスキーなどと比べれば低く、割ることで濃さをコントロールできるところも本格焼酎のよいところですね。私は焼酎の香りを楽しみたいので、お湯割りやロックで飲むことが多いです。飲み足りないときは、仕上げにシークヮーサー(沖縄などで採れる柑橘)入りの炭酸水を飲むと満足してしまいます。これに泡盛を少し注ぐとおいしいのですが、そこはぐっと我慢です」
これからの季節は、焼酎を飲む前にまずビールを飲みたくなるが、浅部さんは最初の一杯をノンアルコールビールにすることでアルコール摂取を減らすことをすすめる。
「最初の一杯は、案外喉越ししか感じていないものです。ですからノンアルコールビールで満足できるのです。それに最近のノンアルコールビールはずいぶんおいしくなりましたからね。それから本格焼酎をじっくりいただきます」
最後に、肝疾患の治療にあたる肝臓専門医としてこう語る。
「健康でお酒好きな人に飲むなとはいいません。ただし、生活習慣病など酒が引き起こすリスクはあります。適量を守り定期的に健康診断を受けて、いつまでも本格焼酎がおいしくいただけるよう、お互い頑張りましょう」

解説 浅部伸一さん(肝臓専門医・59歳)

東京大学医学部卒。製薬会社で新薬開発などに従事しながら大学病院非常勤医師を務める。専門は肝臓病学、ウイルス学、免疫学など。『長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい』など肝臓やお酒に関する書籍の監修・著作多数。
取材・文/宇野正樹 イラスト/福田希美












