姉は子どもと私を救ってくれた
離婚が成立した後も、養育費込みの財産分与があったこともありお金の心配はなく、定期的に姉が様子を見に来てくれたことで生活はできていた。しかし、子どものことをかわいく思うことができなかったという。
「子どもが楽しそうにしていても、私に甘えてきてもかわいいと思えず、泣いていても放っておいたらいつか泣き止むだろうということしか思いませんでした。生活はちゃんとすることができていたので、表面的にはちゃんと母親の役割は果たしていたはずだから、余計にこんな内面を誰にも相談できませんでした。
私は子どもから離れたい思いから、仕事を始めました。働いている間は子どもを外に預けるようになり、離れる時間が増えたものの、子どもに対する愛情はよくわからないままでした」
子どもが駄々をこねたときに、ついに茜さんは手を出してしまったという。その罪悪感から子どもと同じ空間にいることができなくなり、そのときに姉に「母親になれない」と泣きついた。
「結果、姉が子どもを預かってくれることになりました。手を出してしまったことについて、姉は私のことを怒りませんでした。姉は『今伝えてくれてありがとう』と言ってくれました。手遅れになる前に、ということだったと思います」
姉夫婦にはどちらかに子どもができない原因があり、子どもを授かれなかったという。「だから、子育てができるのがうれしい」と茜さんの気持ちを救う言葉とともに姉夫婦は定期的に子どもを預かってくれ、子どもは現在20歳に。子どもは茜さんと茜さんの姉夫婦を慕い、茜さんの家から元気に大学に通っている。
子どもに必要なのは親だけではない。信頼できる大人が周囲にいることで子どもはたくましく育つことができるのだ。そのためには、今回の茜さんのように姉、そして姉の夫という信頼できる人が必要だろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。