【定年後の歩き方】「仕事以外に何もない人生だったから子供が欲しい…」美容に年間100万円をかけ婚活する60代の悲願～その２～

国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集（2023）』によると、日本人の生涯未婚率（50歳時未婚割合）は上がり続け、2020年時点で男性は約28％、女性は約18％と過去最高を更新。

2000年のデータを見ると男性は約13％、女性は約6％なので、男性は2倍以上、女性は3倍に増えていることがわかる。「結婚できない・したくない」という人は今後も増えることが予想される。日本は全体的に低収入であり、男性は経済的責任が強く、女性は家事と育児の負担が大きい傾向にある。結婚の側面は、お金も時間も家族に使うことだ。ひとりで生きていた方が、自己実現がしやすいことは自明だ。

和貴さん（62歳）は、60歳で大手金融関連会社を定年退職し、婚活をして3年目を迎える。30代で離婚歴があるが子供はいない。3年間も婚活を続けているのは子供が欲しいからだという。

【これまでの経緯は前編で】

60歳は仕事の限界、疲れて働けない

離婚してから、和貴さんは仕事に邁進する。大手の金融関連会社において、離婚することは出世レースから外れることを意味する。だから、和貴さんは資産を増やす計画を実行する。

「愛人を続けていた女と結婚したことで良かったのは、経済的なダメージを受けなかったこと。また、ずっと独身だと、子供の養育費や教育費用が全くかからない。その分を全て投資に回せるんですよ。今の人たちが“結婚と子育ては無理ゲー”というのもよくわかる。僕の収入をもってしても、子育てに時間と金を割かれるのは痛手です」

仕事に邁進しながらも、複数の女性と出会い、愛し合っていたという。ただ、前回の結婚で強烈な女性不信に陥っていた。

「古い寺の娘を自称し、音大卒という虚偽の経歴で私を騙した女性が元妻ですからね。遊びでいいと思っていました。大学の同級生や、会社の後輩など、いろんな女性の経験があります。40代のときに、10歳年下の女性にプロポーズしたら“うそでしょ！”と。僕は女性が嬉しくてびっくりしてそのセリフが出たのかと思ったら、“ありえない”と。僕は金払いがよく、自分を甘やかしてくれるただの遊び要員だったんです」

和貴さんは女性を切らしたことがないという。だからこそ、女性の恋愛・結婚観をよく知っている。生涯未婚率が上がり始めてから、女性の結婚願望も薄らいでいるという。

「自分で生活ができるから、結婚する必要がない。元妻の時代は、男に縋（すが）らないと生きていけなかったけれど、ここ最近はそうではなくなっている。僕は女性に慣れているし、割り勘のデートなどしない。だからこそ、いい遊び相手なんですよ。結婚して、お互いの人生を背負い合うなんて、苦行ですから」

和貴さんのプロポーズを「うそでしょ！」と一笑した彼女は元部下だ。今は二児の母だという。

「僕と同時並行で付き合っていたフリーターの男と結婚したんです。大黒柱が彼女ってこと。そんなこと、あるかと思ったけれどね。それで、10年前、彼女と食堂で一緒になった時に“定年後に子育てをしたい”と相談したら、“和貴さん、子供を産む可能性がある女性と結婚するには、見た目とお金です”と指摘されたんです」

そして、彼女は、エステや基礎化粧品を紹介してくれた。和貴さんは忠実にそのアドバイスを実行。美容クリニックに通い、顔のシミをとり、スキンケアにもお金をかけることに。歯科矯正を含めると、この10年間で美容にかけたお金は500万円を超えるという。

「一時期、彼女とは時々交渉をもつ友達のようになっていて、一緒に韓国に行って、ピーリングとかシミ取りとかの施術を受けたことも。これがまあ、物凄く痛いのに効果は抜群。今では痛みがないと効いていないとすら思うようになりました」

そうこうするうちに定年の日を迎える。延長をすることもできたが、それなりの資産もあり、会社を去ることにする。

「現場で働き続けたら、60歳定年が妥当。かつては55歳が定年だったんですよ。60歳になったらもう疲れて働けない。生涯現役などと言われているけれど、体力にも気力にも限界がある。仕事を続けることが礼賛されるけれど、僕は60歳定年でいいとも思っている」

【全ては子供のために、年間100万円近い金額を美容とファッションに支出……次のページに続きます】