取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

2023年12月国立研究開発法人国立がん研究センターは『世界の最新がん罹患状況の公表~70カ国455地域参加による国際共同研究~』に初めて「日本」という単位で罹患が採用されたと発表。

日本と欧米諸国を比較し、日本が高い罹患率を示した部位は、東アジアに特徴的な胃がん(約5~10倍)や肝臓がん(約2倍)、胆のう・胆管がん(約2倍)、膵臓がん(約1.5倍)だったという。

玲子さん(63歳)は「お金がない、時間がない、私は大丈夫……そんなことを言っているから、私の娘(38歳)にがんが見つかったときは手遅れだった。治療費と祈祷師代でだいぶお金を使いました」という。

夫婦で営む地元の「ちょっといい店」

玲子さんは1年前まで埼玉県内でも群馬県に近いエリアに住んでいた。夫は腕がいい寿司職人で、地元でも「ちょっといい店」として有名だった。地元の建設会社、議員などからも支持されており、2000年ごろまでは、年間の売り上げが2000万円に達することもあったそう。

「当時は魚も安く、仲卸人さんとの持ちつ持たれつのいい関係が築けていたんです。私は魚のことはわからないけれど、明らかにいい魚が入っていた。丸々と太って、目がキラキラした魚が採れた時代だったんです。子供は娘しかできなかったけれど、15歳年上の夫と、夫婦2人で仲良くお店をやっていました」

2005年ごろ、大型ショッピングモールができ回転ずしチェーンが進出してきて客足は激減。そのころ、娘はすでに大学に進学していた。それまでの十分な貯えもあり、不本意な商売をするなら、店をたたむという選択肢もあった。

「でも、夫がどうしてもやりたいというから、店を開けていたんですけれど、坊主の日(客が0人)も出るように。でも、昔からのお客さんが来てくださっていて、夫婦2人で続けていたのです」

コロナ禍は助成金で乗り切り、ゆっくり休んだこともあって、商売も前向きになった。その矢先に夫が交通事故を起こしたのだ。

「あれは2021年、飛び出してきた子供をよけようと、電信柱にぶつかる事故でした。今の子供って、怒られることを恐れたのか、その場から逃げちゃったんです。通報が遅れ、意識不明が続きました。あちこち骨折していて、車いす生活が1年以上続きました」

高齢者の交通事故は、あたかも高齢者が悪いかのように報じられる。玲子さんの夫の交通事故は、報道こそされなかったが、「寿司屋が子供をひいた」というデマが一人歩きした。「あなたの事故の話を聞いて、老親の免許を返納させた」とわざわざ言いに来る人もいたという。

半年以上に及ぶ入院を経て、夫の予後は芳しくなかった。手の震えが出てしまい、寿司はもう握れない。

「3か月ほど車いす生活をしていましたが、厳しいリハビリを経て、杖で歩けるようになったんです。これではもう、お店はできないと閉めようとした矢先に、東京で働いている一人娘から“私、がんになった”と連絡がありました」

【気付いたときには、手遅れというすい臓がん……次のページに続きます】

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