取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
厚生労働省が発表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談件数は15年連続で100万件を超え、紛争の内容は「いじめ・嫌がらせ」が最多となっている。
実際にどのくらいの人がいじめに遭っているのかを知るために、株式会社ライボの調査機関「Job総研」では、650人の社会人男女を対象に「2023年 職場イジメの実態調査」を実施(実施日:2023年8月16日~8月21日、有効回答数:650人、インターネット調査)。調査にて、実際に受けたことのある職場イジメのレベルを聞くと「経験したことがない」が33.8%と最多だったが、「1対1の比較的軽度な言葉によるからかい(いじり)」をいじめのレベル1として、残りの66.2%がレベル1~5のいじめの被害体験を訴えている。
今回お話を伺った咲良さん(仮名・41歳)は、5歳年下の男性と35歳のときに結婚。ずっと同じ職場で働いていた2人は結婚を機に、夫は取引先に転職、妻はフリーになった。【その1はコチラ】
夫は上司と部下の板挟みに遭い、適応障害の診断を受ける
結婚生活のスタートはお互いに仕事のことだけで精一杯だった。結婚前からお互いの仕事状況を理解していたこともあり、それによって夫婦の危機とはならなかった。
夫婦の危機は、新型コロナのまん延による仕事環境の変化によってもたらされた。
「夫の勤める職場がテレワークを導入して、夫はそのときには役職がついていて、数人ですが部下を束ねる立場でした。夫は在宅勤務でもストレスを抱えるタイプではなかったんですが、部下や上司がそうではなかった。部下の不満を吸い上げ、上司に報告すると『部下を管理できていない』と夫に強くあたってくるようになったようです。夫は出勤する日もあったのですが、帰って来たときには目に生気が感じられないくらい、見るからに疲弊していきました」
その期間は半年以上続き、身体症状も表れたことから夫は心療内科にかかり、適応障害の診断を受ける。仕事を休職することになり、そのまま退職に至ったという。
「眠れなくなって、仕事のミスも増えて、さらに上から叱咤を受ける。夫は私と元同業ということもあって、ライバル視しているのか私に仕事の話を一切してこなかったんです。私もそれに対して無理には聞きませんでした。それが夫婦のバランスだったからです。
そこまで追い込まれていた状況に気づいたのは義母で、病院に行くことを促したのも、休職から退職するように促したのも義母でした。
このとき、一緒に暮らしていながら、夫の状況に気づかなかった私に対して、義母は不信感を持ったのだと思います」
【無職の夫+義母との同居、でも離婚の意志はなかった。 次ページに続きます】