離婚したくても、できない理由は息子の浮気
4月に息子から「家に戻りたい」と言われて、受け入れてから約1年が経つ。
「息子は我が子だから戻ってきてもいいと思いましたが、まさか孫までくっついてきた。私たち夫婦は、孫が最もかわいい“つ”が付く年齢(ひとつ〈1歳〉~ここのつ〈9歳〉)まで、都合のいいときに預けられるだけで、天使のようにかわいい頃に無責任にかわいがるという経験をしていないんです。だから、それほど孫に愛着がない。加えて、私たちは子供が嫌い。だから1人しか作らなかったのに、まさか孫も同居するようになるとはね」
さらに、政子さんは、嫁と息子が離婚してスッキリするのかと思ったら、2人は未だに婚姻関係が続いているという。
「冗談じゃないって話ですよ。私たちが死んだら、息子の配偶者であり、孫の母親でもある嫁にウチの財産の分け前が行く可能性もあるってことじゃないですか。息子に“離婚しろ”と言ったら、息子からは言えないと。聞いたら息子は嫁との関係が悪いときに、大学の同級生と不倫していて、その証拠を嫁が押さえているとか。しかも、その探偵の調査費は、息子が稼いだか、ウチから出たお金かなんですよ」
有責配偶者から、離婚を切り出すのは難しい。加えて嫁は息子に月15万円の婚姻費を請求。社宅に住み続け、光熱費も息子が支払っており、嫁は月15万円の「お小遣い」を得て悠々自適に暮らしているという。
政子さんはそんな嫁に対して、沸騰する怒りを抱えながら、今日も4人分の家事をしている。
「主人と私のときは、2日に1回洗濯機を回せば事足りていたんです。しかし、息子と孫がいると、2回でも追いつかない。加えて私立中学校だから、毎日弁当を作らなきゃいけない。家事が3倍に増えて、この前は股関節と膝が痛くて歩けなくなっちゃったんです。病院にかけ込むと、筋肉疲労だって。主人も息子もちょこちょこ家事をしますが、孫はドーンと座って何もしない。嫁にそっくりなんですよ」
さらに孫は嫁の影響が強く、「他人が自分のために献身して当たり前」と思っているところがあるという。
「13歳でこれからどんどん“男”になっていくじゃないですか。またあれを見るのかと思うと、うんざり。この7か月で、貯金が目減りしました。この状況が続けば、ウチは破綻する。老人ホームに入っている主人の両親の長生きリスク、孫リスクで、私たちの老後はヤバいです」
これを打開するのは、息子と嫁が離婚し孫が嫁と暮らすこと。しかし、その望みは薄い。孫は「ママと生活したら、今の学校にも、大学にも行けない」とわかっているからだ。今、婚活ビジネスが盛んで、我が子を結婚させようと親同士が婚活する時代だという。政子さんの話を聞いていると、結婚はリスクでもあり、無理に進まないほうが平穏に過ごせるのではないかと考えてしまった。
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。