取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

「手取り34万円のサラリーマンに中学受験は向いていないと思う」とこぼすのは、政子さん(69歳)だ。政子さんは小規模な習い事サロンを主宰しており、同じ年の夫がいる。13年前に孫(男子・13歳)が生まれるまでは、2人でゆとりある生活を謳歌していたという。

問題は長男とその嫁(ともに42歳)だ。嫁は元読者モデルの見栄っ張りで、息子はその言いなり。長男にお金を援助するうちに、「お金がいくらあっても足りない」という状況に陥っているという。

そして、今、困っているのは、1年前に長男夫婦の関係が破綻し、息子と孫が出戻ってきてしまったことだ。長男夫婦の関係を壊したのは中学受験だという。4人暮らしになってから生活の質は、落ち始めている。

【これまでの経緯はこちら

コロナ不安から中学受験に猛進する

嫁が中学受験に邁進したきっかけについて聞くと、読者モデル仲間の息子が有名私立中学校に入ったことと、コロナ禍で登校禁止になったときに、公立学校の対応が悪かったことだという。

「嫁は、なんでも不満を言うタイプなんです。足りないものを探して、相手に追求するのが得意。自分が空っぽだからなんでしょうね。専業主婦で時間もあるから、孫が通っていた公立小学校の問題点を箇条書きにして、区議さんや教育委員会などに進言していたみたいですよ。そういうことを、社会的に役に立っていると思い込んで、突き進んじゃう」

息子は当時、社宅に住んでいたが、周辺の中学校が荒れているということも、中学受験に進むきっかけになったようだ。

「その地域は、必ずしも文教エリアとはいえない。それどころか少し治安も悪い。“地元中学校には入れたくない”って気持ちが強かったんでしょうね。だから孫は2年生から塾に通っていましたよ。小学校5年になると、塾に通う頻度も増えて、“ウチからのほうが近い”って、夏休みは預けっぱなし。こっちも孫が家にいると、ケガさせちゃいけないし、食事の用意をしなくちゃいけないしで、大変でした」

6年生に進学すると、嫁はさらに過熱。模試の結果が悪い孫に対して「オマエはやる気があるのか」「勉強する気がないならやめろ。金を返せ!」などと怒鳴り散らしたという。

「それに見かねた息子が、“預かってくれ”って。ウチから孫の小学校へは、電車で30分。都心から郊外に向かうから通勤ラッシュはないとはいえ、預かり物の孫でしょ。一人で行かせるわけにはいかないから、主人が送り迎えしていました」

孫と生活をしていてわかったのは、気分で好きな教科をやるために、理解にムラがあること。そこで、政子さんの夫がタスク管理をして、受験勉強をサポートした。

「成績が上がると家に連れて帰り、下がるとウチに来るという不安定な生活だから、勉強に身が入るわけがない。結局、滑り止めの学校にやっとのことで合格したんです。でも、その頃には息子夫婦の関係は完全に破綻していました。我が子をヒステリックに怒鳴るだけで対策をしない嫁と、思考を停止して怒りをやり過ごしながら状況を観察している息子……お互いがお互いと向き合っていない。不幸を生産するような結婚だったんですよ」

【息子と孫が来て家事は3倍に増え、脚が痛くて歩けない……次のページに続きます】

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