取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

殺人や暴力事件の報道に「ホスト」という言葉をよく見かける。2023年6月に静岡県で起こった乳児死体遺棄事件の首謀者は母親(24歳)と男(20歳)だった。彼らは客とホストの関係だったという。

ホスト絡みの報道は多く、学生や10代の女性が「パパ活」ほか性産業で働いた金を、ホストにつぎ込むという救いがないようにも感じる話も多い。その当事者の多くは、親からの虐待やいじめを受けた「居場所がない女性」である。

しかし、実際に歌舞伎町の通称・ホスト通りと呼ばれる道を歩いていると、地味で真面目そうな女性も多い。いわゆる「普通の人」がホストにハマっていくのはなぜか、取材を続けるうちに、妙子さん(60歳)に出会った。彼女は2年前に娘(30歳)がホストにハマり、300万円を使ってしまったという。今、娘はホスト遊びをやめ、派遣社員として働いている。

妙子さんは当時を振り返りながら、「ウチの娘は、“認められたい”という心の隙間に入り込まれたんでしょうね」と語る。

「惨めな思いをさせたくない」無制限の小遣い生活

妙子さんは、「自分の娘がまさかホス狂いになると思わなかった」と当時を振り返る。妙子さんの夫(64歳)は、大手商社に勤務していた元会社員で、現在は観光ガイドのアルバイトをしているという。妙子さんも英会話講師で、カルチャーセンターや自治体の講座で教えている。

東京近郊の住宅街にある一戸建ての持ち家に暮らしており、ここで2人の娘を育て、大学まで出しているという水準以上の家庭だ。

「学費にとにかくお金をかけてしまったので、老後資金は全然たまっていないんです。娘2人は中学から私立でしょ。中学校も公立なら学費ゼロ円だけれど、私立は年間100万円ですからね。それに、子供に恥ずかしい思いをさせちゃいけないと思って、お友達との旅行やお小遣いなども無制限。娘の高校2年の夏休みの小遣いを計算したら10万円でしたからね」

最近、老後破産も話題だ。その原因のひとつに高額な学費を使ってしまうことにある。私立校進学、海外留学、海外ホームステイなど、「自分が親にやってもらえなかったこと」を子供に惜しみなく与えてしまうのだ。

「実際に、子供が目の前で“これをやってみたい”と言うと、大金も惜しくなかったんですよね。いちばん、清水の舞台から飛び降りたのは、娘のアメリカ留学。たった半年間なのに、ホームステイ先のファミリーに月20万円、学費に100万円をつぎ込みました」

夫も妙子さんも、親から暴力を振るわれて育ったために、娘達には手を上げたこともないという。

「私たちの子供の頃はすごかったんですよ。今でも私の腕に跡が残っているけれど、これは私が弟をいじめたときに、母から据えられたお灸。私もまだ5歳でいたずら盛りですよ。私が“熱いよ”って泣いても、母は鬼の形相で“弟はもっと苦しいんだから我慢なさい”と言われ、我慢していたらこんなことに」

進学するときも、「女なんだから大学は行くな」と言われた。しかし、妙子さんは英語や世界情勢の勉強がしたかった。父の大反対を振り切って、国立大学に進学。学費も払ってもらえず、新聞奨学生をしていたという。

「住み込みで働いて、新聞を配ってから学校に行って、夕刊の時間には帰ってくるの。休みなんか全然なくってね。まあ、そこでパパ(夫)と知り合えたからいいんだけど。私の惨めな話はもっとあるわよ。でもそういうことを、娘達には絶対にさせたくなかった」

【“海外で仕事を”と育てた娘は、アイドルになりたいと言った……次のページに続きます】

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