取材・文/坂口鈴香

画像はイメージです。

「コロナ禍で弱った両親。叔母の急死で状況が一変した」(https://serai.jp/living/1108273)で紹介した中澤真理さん(仮名・57)。中澤さん一人で90代の両親、母親の妹である叔母に先立たれた叔父、そしてステージ4のがんと判明したもう一人の叔母を介護する様子は身につまされる人が多かったようだ。なかでも、両親は月20万以上の年金をもらっていながらも、父親を老人ホームに入れ、母親は自宅で暮らすとなると年金では足りなくなるという現実に、子世代からは「どんな解決法があるのか知りたい」、現役ケアマネジャーからは「自分ならこんな方法を取ります」などという声が寄せられた。

前回お話を伺ったとき、胸椎を圧迫骨折し入院していた中澤さんの父、要さん(仮名・98)は退院が迫っていた。要さんのホーム入居問題はどうなったのか。がん末期でホスピスに入っていた母、富代さん(仮名・92)の二番目の妹、宣子さん(仮名・85)は? 気になるその後の話をお聞きした。

葬儀とホーム入居のカンファレンスを1日で済ます

「叔母はホスピスで最期まで食いしん坊のまま逝きました」――中澤さんは宣子さんを看取り、初めて喪主をするという経験もしていた。

それだけではない。葬儀だというのに、またもや綱渡りに近い分刻みのスケジュールをこなしていたのだ。

「コロナで家族だけの葬儀にしたので、喪主といっても気は楽でしたが、ちょうど父が入居待ちしていたホームの部屋に空きが出て、入院先の病院スタッフ、ケアマネ、ホームのナース、そして家族という四者カンファレンスが夕方あるその日に叔母の葬儀となってしまいました」

ちょうど台風が九州を直撃しようというタイミング。友引が重なるなどして、葬儀の日を動かすこともできなかった。

「カンファレンスも多くの方に時間を調整していただいているのでキャンセルするのは申し訳なく、結局、叔母の火葬場から喪服のまま病院のカンファレンスにタクシーを飛ばすということでなんとか両方クリアしました」

仕事でもキャリアを積んできた中澤さんらしい対処に脱帽したのだが、カンファレンスが行われたということは、要さんがホームに入れる算段が付いたということなのか。それとも、予算内に収まるもっと安いホームが見つかったのだろうか。

そう聞くと、「いいなと思って入居を検討していた、生活費だけなら月13万の有料老人ホームに決めました!」という答えが返ってきた。

窮状を救ってくれた、昔の“お宝”保険

「父は束縛が嫌いで、病院でもなんとか骨がうまくついて歩けるようになったので、住宅型の有料老人ホームを選びました。病院が経営していて、24時間ナースもいるメディケアに定評のあるところで、家からもバスで10分のホームです。週2回のデイサービス、毎日朝晩のヘルパー巡回、あとは訪問歯科や医師の診察、薬と、なんだかんだ月額17~18万円かかっています」

看護師が24時間常駐して、月13万という好条件の有料老人ホームは首都圏では考えられない。それでも、トータルで月に17~18万円もかかると、母の宣子さんの年金数万円を足しても赤字になってしまう。それではホーム入居はとても無理だ、と中澤さんは躊躇していたはずだ。

「そうなんです。その試算に二の足を踏んでいたのですが、父の生命保険が満期になったまま置いてあることがわかったんです。母と相談して保険の担当者に話をしたところ、昔の保険なので解約しても利子がついて返ってくるということでした。私に残してもらう必要はないので、迷わず解約して、父のために毎月足りない分に充てることにしました。これで5年はなんとかなるという腹づもりです」

満塁逆転ホームランだ。神様はがんばる中澤さんを見捨てなかった。そして、教訓。親が入っていた昔の保険がないか、一度探してみるべし。

中澤さんは、要さんの退院とホーム入居準備に並行して、叔母の宣子さんの見送り、死後の手続きに再び奔走した。特に宣子さんは独身で一人暮らしだったので、マンションや家財道具の処分という大仕事が中澤さん一人の肩にのしかかった。

後編に続きます】

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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